あの山この沢
丹沢、塩水川本流(堂平沢)
堰堤の連続でつまらないが中間部の岩床は楽しい
画像をクリックすると拡大されます。
コースタイム
塩水橋ゲート420m→(42分)ワサビ沢出合690m→林道経由→(25分)堂平橋870m
→水無沢を下降→(3分)橋下のF1、8m滝下860m→(5分)F2、12m滝下870m→
(10分)F3、8m滝下895m→(2分)3m滝下まで戻って右岸の小沢に入る890m→
(10分)大岩壁状滝・大スラブ上930m→(5分)F4、2段9m滝上945m→
すぐ大堰堤が2つ続くので、巻かないで右の斜面に取り付く→ほぼ直上する→
(6分)だたっ広い植林帯の尾根上(堂平の一角)1000m→(1分)登山道1000m→
(7分)塩水林道終点890m→登山道を下降→(15分)ワサビ沢沿いのコンクリ道705m
→(1分)塩水林道ワサビ沢出合690m→(30分)塩水橋ゲート
2006年6月4日
☆キューハ沢出合まで伸びる本谷川林道や丹沢山登山口の堂平まで行ける塩水川林道は10年ぐらい前から「不法投棄を防ぐ」という名目で塩水橋から先は完全に通行止めである。
しかし至るところ、工事業者が捨てたらしい産廃が散らかっていることは昔とちっとも変わらない。通行禁止のはずの林道になぜ工事残骸物やブルーシートが散らかっているのか。
☆これ以上林道開発工事はしないはずの県の方針も、塩水橋のゲートをくぐって本谷橋に架かる瀬戸橋まで行けば、いったい誰のための工事なのかすぐに分かる。なぜ一般車通行禁止の林道にこんな立派な橋があるのか、なぜ関係者以外通行禁止の林道にガードレールが必要なのか。このあたりのことは、「塩水川弁天沢」のページも参照。
★さて、本谷川や塩水川に入るには塩水橋付近に駐車しなければならないが、土日休日は早朝より塩水橋付近は満車状態
となるので、短い沢に入るにも早立ちしなければ駐車スペース争奪戦に勝てない。
★塩水川右岸に付けられた塩水林道は傾斜がかなり急で、グングン高度を上げ最初の左への大ヘアピンを過ぎて2度目の左大ヘアピン手前、標高600m付近で対岸より弁天沢が出合う。冬場ならこのあたりからも見上げることができるが、夏場は葉が生茂って、次のヘアピンを上りきってからの方がよく見える大木が、弁天沢の右岸、円山木ノ頭から派生する弁天尾根の中腹の弁天杉である。弁天杉は胸高周りおよそ8〜9mの古木で、西丹沢の箒杉に次ぐ丹沢の巨木だ。
★弁天沢出合から林道をおよそ7〜8分で、ワサビ沢出合に達する。ワサビ沢は、出合から見上げるはるか上流まで堰堤が連なりある意味見事といえるほどの堰堤の階段状人工河川化した沢だ。出合から23個(1996年10月5日現在)堰堤を越したところから自然のままの沢を遡行することになるが、もはや源頭域
(標高860m)からの遡行となる。それでも滝はあるのだが。しかし、この人工化した沢も、大工事のおかげで各堰堤基部の護岸の植林が生茂ってきて
、現在では出合からはるか上まで堰堤が見通せる谷ではなくなった。
★ワサビ沢出合は、同時に堂平沢出合でもある。堂平沢が塩水川の本流ということになっているが、水量はワサビ沢の方が多い(3:2)し、谷の切れ込みや
広さ、大きさからはワサビ沢の方が堂平沢よりはるかに本流らしく見える。源流域の広さや源頭の最高点が丹沢山1557mということから堂平沢が本流ということなのか。ここでは、山と渓谷社刊の『丹沢の谷110ルート』に従って堂平沢を本流とすることにしたが、地元では堂平沢で通用している。
同じく山と渓谷社が発行していた『ヤマケイ登山地図帳』1994年版では「本谷」と記載されている。日地出版の古い地図でも、堂平沢は堰堤もなく水量が多かったのか、かなり上流域まで水線が描かれている。
★堂平や堂平経由丹沢山への登山道は、このワサビ沢出合から、堂平沢とワサビ沢を分ける急峻な痩せ尾根の天辺にほぼ尾根に忠実に付けられている。今回は急登の登山道を避けて、のんびり大きく堂平沢の谷を巻いている林道を登っていくことにした。地図で見てもかなりの大回りだが、林道終点までの所要時間はさして変わらないだろう。
★林道終点手前で谷の狭い小さな沢の切れ込みの左にすっきりした岩壁が見えはじめる。この岩壁が、堂平沢のF3を巻くルートだ。
★林道終点手前の堂平橋は、これがほんとに本流か?と疑いたくなるような小さな沢、狭い沢をまたぐだけの短い橋だ。正面あるいは右手に見えるワサビ沢の谷の方がはるかに大きくて深い。
★この橋の真下に、これから遡行するF1、8mの垂直の滝がある。橋から上流を望むとF2、12mの滝もすぐそこに見える。
★この沢は遡行距離が短いから、橋下のF1を省略してはもったいない。堂平橋前後には滝下に簡単に下降できそうな所はないが、林道を20mも戻ると「水無沢」と書かれた小沢が本流に流れ落ちているので、この水無沢を下降する。小沢の右岸側からガードレールをまたいで沢に降り立ち、ゴーロを下ると最後は1mぐらいの小滝となる。降り立ったところは本流(堂平沢)F1直下だ。大休憩用の水はこちらの沢で汲んでおこう。
★F1は水流右側が登れそうだが、かなりぬめっているので左の乾いた岩窪を登る。出だしの1歩が難しい。上部も岩がボロボロしているし、滝上に出るところで藪がうるさい。滝の右のガレたルンゼを登るのがいちばん楽そうだが、上部で早めに落口に戻らないと林道に登り
着いてしまいそうだ。
★落口の真上に林道が走っている。橋をくぐってほんのちょっとでF2、12m滝だ。なかなか立派な滝だ。しかし登れそうもない。
★F2は、少し戻って右岸に2段滝で注ぐ枝沢に入って巻く。1段目(3m)は簡単だが、2段目(1.7m)はどこもボロボロの滝だ。2段目の上から右のF2滝落口へトラバースするからなるべく右を登りたいが、掴む岩がぐらついていて難しいので、楽そうな最左端を登る。しかし、この上は不安定なガレで水流の消えたガレを右端まで数メートル移動するのに
、上部からガレが崩れ落ちてきそうで緊張する。この枝沢の左岸岩壁がF2を形成する岩壁の左端になるので、ここから落水を見ながら落口へ斜上する。登り過ぎないように、本流の水流が見えたら下降を始める。ほんの数メートルだが難なく落口上の2m小滝の上に降り立てる。この巻きトラバースルートは、踏跡がしっかりしているので迷うことはない。
★12m滝の落口を鑑賞して、この2m小滝、続く2m小滝を越すと、本流は急に水流がなくなる。水流はどこから流れてくるのか、不思議なことにかつて水流のあった本流の岩床はきれいに磨かれて白くなっているのだが、ここはもう水流はなく、F3につながる右岸の岩壁の下からあふれ出してきているのだ。
★先に触れた山と渓谷社刊の『丹沢の谷110ルート』に掲載されている1994年10月の写真ではこの先のF3(8m滝)は水流があるの
に、2年後の1996年9月に遡行したときにはもう水流はなかった。このときは、右岸岩壁の下部いたるところから水が染み出ている感じだったが、現在ではおおよその地下水脈が出来上がったのだろうか、一定のところから勢いよく流れ出している。
★『丹沢の沢』ではF4上に丹沢山から堂平への登山道が沢を横切る所までに堰堤が6個あることになっているのが、その2年後には
13個あった。6個のときには水流があった沢にさらに7個の堰堤を築造したら水流がなくなったと考えることができる。もちろん登山道よりも上流はさらに堰堤工事だらけだ(った
)から、この7個だけのせいともいえないかもしれないが、
堰堤が抉り取られないよう地中深く杭打ちをしてるそうで、そのため表面水はすべて枯渇してしまって、地中深く潜ってしまったようだ。しかし、この岩壁(実はとてつもなく大きな岩盤なのだということがこの後分かる)の下から潜った水流が湧き出てくるということは、いつか遠い将来この岩盤自体が地滑りを起こすのではないかと心配になってくる。
★さてさて、水流の出所はともあれ、涸れた本流を数分でF3手前の3mゴルジュ滝となり、これを越すとくだんの1994年には水量のあったF3、8m滝だ。手前の3m滝もこのF3もかつての水流に磨かれて白くきれいだ。8m滝は今は水流がないので、水流を気にすることなく取り付けそうだが、左は中間部がハングしている。右は少し寝ているので取り付けそうだが、この沢の核心部は実はこの滝の登攀ではなく、この滝の高巻ルートとなる大岩壁なのだ。だから無理してここを登るよりはさっさと巻きルートに戻ったほうがいい。
★このF3下にごく最近捨てて行ったらしい缶ビールの空缶が4個と缶コーヒーの空缶が1個あった。こんなところには山仕事の人も来るはずがない。やっぱりというか、相変わらずというか、岩屋さんと言われるクライマー達のマナーの悪さは困ったもんだ。この滝の登攀を目的にここにやってきたのだろうか、ビールを飲みながら仲間のムーブを品評してたのだろう。登攀具に比べたら空缶なんぞ軽いものだ、持って帰ることぐらいしてほしいものだ。クライミングの練習ならここよりもこの上の大岩床の左岸岩壁が格好だろう。
★F3の巻道は少し戻って、水流が出てくる右手の岩壁の先にあるガレたルンゼに入る。すぐに右手上に大岩壁が立ちはだかっているので、これを登る。一番手前の岩窪から取り付けばいいが、このルートは少々難しい。しかし7〜8mも登れば安全圏だから、スリップしないよう頑張って登る。およそ10mぐらい上部に錆びているがしっかり固定されたハーケンがある。中間ビレーは右手のブッシュからも取れる。
★このルートが難しければ、ガレを奥まで登って岩壁最左端から取り付くほうが安全だ。右端から取り付いた場合7〜8mで下部のブッシュもなくなり、すっきりした岩壁になりどこでも適当に登れるようになる。この岩壁は、大雨などのとき多分本流から溢れた水が流れて形成された滝なのだろう、きれいに磨かれていて美しい。40m近く登りきると、一枚岩の大岩盤の小尾根台地となり、岩床の松や檜の疎林となる。
★この岩盤台地のすぐ向こうに、一段下がった白く磨かれた岩床を形成している本流の跡がある。10年前にはこの本流跡もかなり広く開けた上越の沢のスラブの如き景観をなしていたが、水流がないせいかたまに大雨で流されてくる土砂で埋まり始めている。もう10年もすると泥と藪に覆われた台地になってしまいそうだ。この対岸(左岸)は高さ10〜15mの広大なスラブだ。岩質は広沢寺の弁天岩に似ている。
★岩床台地で大休憩を取れば、もうこの沢のフィナーレも近い。F4とされる2段9mの涸滝を慎重に越すと、眼前に2段続く大堰堤が立ち塞がる。左右どちらからでも越せるが、この堰堤を越しても、丹沢山からの登山道が横切る所まで延々と堰堤と涸れたゴーロが続くので、これで遡行終了とする。
★10年前には登山道まで13個の堰堤があったが、今はもっとあるかもしれない。堰堤工事については県の治山事業のHPを参照のこと、航空写真もあり。
参考タイム(1996年9月21日)F4上の河原945m→(8分)堰堤2個上→(10分)堰堤7個目上1050m→(15分)堰堤13個目上登山道1130m→(20分)林道終点890m
★右手上の植林の台地が堂平の一角だから、そこを目指して右手の泥斜面を攀じ登る。藪もなく比較的簡単に高度差およそ50mの植林帯に達することができる。文字通りほとんど平坦な地形だ。林道方向にほとんど水平に十数m進めば登山道に達する。
★林道終点からは国土交通省のロボット雨量計の建物の脇から、堂平沢とワサビ沢を分ける急峻な小尾根につけられた登山道を下る、ほぼ尾根の天辺につけられている登山道を15分も下ればワサビ沢出合に降り立てる。下りは林道を歩くよりもこのルートの方が圧倒的に早い。ワサビ沢出合からは林道を塩水橋に下る。
<home
<丹沢top