あの山この沢
丹沢、神ノ川仏谷小谷(Kotani)
蛭ヶ岳北西面に突き上げる仏谷の支流小谷は
迫力の大滝もある静かな沢、藪漕ぎなしで縦走路に
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コースタイム
神ノ川ヒュッテ560m→(トラックで10分)広河原725m→(10分)岩水沢出合720m
→(5分)金山谷F1(魚止滝)5m滝下730m→(18分)金山谷出合790m
→(30分)仏谷F1、5m滝下865m→(10分)滝上→(5分)小谷出合890m
→(18分)5m滝1010m→(10分)15m大滝下1125m→(10分)滝上の河原1045m
→(5分)左岸大崩壊地1075m→(15分)二俣1090m→(20分)水涸れる1215m→
(20分)泥とガレの溝が幾つにも分かれる1315m→左のガレから枝尾根に這い上がる→
(10分)縦走路1380m→(15分)縦走路から分岐1330m→(10分)地蔵平(下降路分岐点)1345m
→(10分)鹿落とし1220m→(15分)カニの横バイ1180m→(42分)神ノ川(金山谷)720m
→(10分)神ノ川林道→(40分)神ノ川ヒュッテ
2003年6月14日
★神ノ川
は広河原で右(左岸)から広大なゴーロと大きな堰堤で彦右衛門谷が合流して、それより上流は金山谷と名を変える。蛭ヶ岳を源流とする仏谷が本谷ではなく、蛭ヶ岳から主脈縦走路を約2km西に下った神ノ川乗越にツメ
上げる谷を本谷とするようだ。こちらの谷には金山谷と名付いてることから、金山谷が本流というわけだが、どこから金山谷なのか正確にはわからない。人によって違うようだが、通常は、仏谷と金山谷に分岐する所までを神ノ川というようだし、そのほうが分かりやすい。
しかし、広河原から先を金山谷とする本のほうが多い。
★小谷は仏谷の支流で、蛭ヶ岳の肩に当たる仏谷と小谷を分ける尾根の派生する所から地蔵平までの稜線を源頭にする、支流とはいえ比較的流程の長い沢だ。
★地図で見れば分かるように、地蔵尾根は北側は岩水沢、南側は上部は小谷、下部は仏谷、末端は金山谷に囲まれていることになる。
★したがって、小谷に入るには金山谷下部を遡行し、仏谷下部を遡行してやっと小谷にということになる。
★広河原から岩水沢出合までは、岩水沢のページを参照のこと。
★岩水沢出合を過ぎるとすぐに地蔵尾根登山道の取付点の標識があるが、今は半分壊れている。この取付点から沢はゴルジュとなり、すぐに金山谷F1、5mの魚止ノ滝がある。右岸に巻道もあるようだが、3,4歩だが腰まで水に浸かって釜の左側壁を伝い滝の落水左のルンゼを攀じれば簡単。この釜は昔より浅くなった
。
★仏谷出合(金山谷出合)までは2〜4mの小滝がいくつも続き、どの滝も大きな釜を持っているが、どの滝も昔より釜が少し浅くなっているので、滝に取り付くのはやさしい。どの釜も水が澄んでいて綺麗だ。
★金山谷を右に直角に分けて仏谷に入っても綺麗な釜を持つ小滝が続く。右岸は概して岩壁状になっている。地蔵尾根を登下降してみれば分かるが、地蔵尾根の勾配が急なだけではなく、両斜面切れ落ち、常時小谷側の水流の音が聞こえるほど斜面自体が急峻だからだろう。
★仏谷のF1(5m)滝は一見難しくなさそうに見えるが、ずいぶん手こずる。落水右のクラックにわずかにホールドがあるので、釜に入って滝心に向かう水流に体を運ばれないように水面すれすれのホールドにすばやく立ち上がって、クラックを攀じる。かなりのシャワーだ。上の大岩のテラスに手が掛かれば一安心。このテラスは乗り上がれば向きが変えられるほど広いが、大岩が被さっているので立ち上がることはできない。大岩の右に抜けるにはこのテラスに上がる必要はないが、右に抜ける足がかりが全然ない。右足のホールドを探している間中シャワーを浴びることになる。さらに大岩がつるんとしているので次の左手のホールドもない。かくしてテラスで休憩となる。
★テラスからは飛び跳ねる落水の裏側を見れる位置だから、右に抜けるよりは落水そのもを突破しようかと覗き込むと、大きく左足を左壁に突っ張れば右手、左手のホールドもわずかにありそうなので、胸にモロに落水の直撃を受けそうだけど何とかなりそうと、中腰で立ち上がってまずは流水の中に右手を突っ込み、もうこれで猛烈なシャワーでまともに目をあけておれない。果敢に左足を伸ばそうとしても水流の勢いで跳ね飛ばされ
、もしツッパリがうまくいっても水圧に体が多分吹っ飛ばされるだろう。結局このルートは退散。ほんの2mぐらいの落差が上がれない。
★やはり大岩の右ルートしかない。右壁と大岩の間の奥に立方体状の岩が挟まっているので、長めのシュリンゲを出して、テラスから一旦ずり下がって、シュリンゲを何度か投げ入れその岩にかろうじて引っ掛け、ちょっと引っ張ってみても外れそうにないので、ここは失敗して滝壺に落ちても濡れるだけだと心を決め、右足はホールドなしのレイバック状にツルツルの岩に突っ張り、右手は大岩下部の小岩を掴み、左手にシュリンゲを持ち替え体を張り出して左足を蹴り込んで、何とか割れ目に
腹ばい状に乗っかる。右手を奥の岩に伸ばし、右膝が割れ目に入って、左足を入れ込み、これで何とかクリア。
★このF1は、右岸の落口かなり上に麻ロープがフィックスしてあり、これが巻道だ
ったが、このフィックス
ロープの末端が垂れ下がっている左壁が上部から崩れ落ちて、下部は露岩の急なスラブになって、宙ぶらりんのロープを掴みに行くことも危険を伴う。しかも、上部は今にも崩れそうに倒木や岩等が張り出しており、近寄るのも怖い。この巻道
を使えないとなると、今回のように滝を強引に攀じ登るか、右の小尾根を大高巻きするしかないだろう。右の小尾根(踏跡あり)も上部は急な岩稜になっていそうだが、30mも登れば尾根を乗越て、滝上の河原に樹林帯を急降下で降り立てそうだ。
★水量比1:3ぐらいで小谷出合、出合から傾斜が増す。
★いくつか小滝があるがどれも簡単。支流とはいえ水量はかなりだ。
★均整のとれた15m滝は、右の顕著なルンゼ(2本あるが右は上で倒木で塞がれる)を登って落口の高さからトラバースできそうだが、下部ルンゼはかなり急だ。こちらはやめて、左の泥混じり斜面を木立に掴まって登り、右斜上するバンドを伝って、落口の2mぐらい下のすぐ脇にある立木に達する。立木の上にも木の根が何本か露出しているので、ここは安全地帯。さてここから落口までは、根元がぐらぐらしている細いブッシュしかなく、フットホールドは落水の中にあるのだが、そこまでの一歩が遠い。落水手前の足場は一歩体重をかけると10m下まで落ちそうで、体重をかけにくい。木の根にシュリンゲをかけ恐る恐る右にずれて、落水を浴びる位置まで移動、滝の上に身を乗り出す。右半身猛烈なシャワーを浴びながら、落水の中のハンドホールドを掴み、左のシュリンゲを回収してすぐにより落口に近い位置の木の根に付け替える。この位置は滝の落口そのもので、かなりの高度感があり、うっかりミスは許されない。手の位置のホールドはしっかりしているので、腕力で登る。
★登ったすぐ上に3m滝がある。この3m滝は、左から難なく越せる。
★しばらく進むと、左岸に大分昔に大崩壊したらしい跡地が現れる。この対岸(右岸)の真上が、地蔵尾根のカニの横バイ辺りだ。遡行をこの辺りで終了するには、左のガレを登ればいいが途中から樹林帯に移らないと、最後が急で大変だろう。
★二俣は地蔵尾根の鹿落としの真下辺りで、左俣に行くと地蔵尾根に突き上げる。地蔵尾根からも小谷の流れがすぐ下に見えるが、地蔵尾根稜線は左手すぐ上に見える。
★右俣本流も次第にガレに変わり、側壁も岩壁から泥の溝に変わる。正面が縦走路。蛭ヶ岳を目指すなら右へ右へ進むことになるだろが、地蔵尾根を下降するなら、適当なところで左のガレを登り小尾根に取付けばよい。およそ10分でほとんど藪漕ぎなしで縦走路に出る。
★縦走路を左に15分も行くと、地蔵尾根の下降路への分岐の道標がある。そこから約10分なだらかに登れば、そこが地蔵平だ。左に下降路分岐の道標もある。
★なお、縦走路から分岐する地点から、姫次を経て袖平山、風巻ノ頭経由で神ノ川ヒュッテまでは最も安全な下降ルートだろうが、登り返しが何度もあって時間がかかる。地蔵尾根経由だと2時間、姫次経由だと2時間半ってところか。
冬期参考タイム(2000年2月19日)
縦走路地蔵尾根取付点→(35分)姫次→(15分)袖平山→(40分)風巻ノ頭→(50分)神ノ川ヒュッテ
★下降点からはものすごい急斜面の下降となり、尾根が痩せてくると幾分傾斜が緩む。
★地蔵尾根下降の詳細は岩水沢のページを参照。