あの山この沢
丹沢、早戸川大杉沢右俣(本流)
水流のない涸れた沢だが、
巨岩のCS滝や10m級の滝が連なり、
本流奥には大滝のあるツメの楽な沢
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コースタイム
魚止橋(旧通行止めゲート)595m→(5分)林道ヘアピン(下降点)620m
→(13分)5mナメ上660m→(10分)右岸岩壁大崩壊地上730m
→(3分)1つ目
8m滝上(廃道となった道が横切る?)750m
→(5分)巨岩帯始まる770m→(25分)大ハング3段CS滝上835m
→(5分)5mチムニー小滝群上(水流あり)875m→(5分)4mCS滝下895m
→(2分)上・二俣右俣に入る(こちらが本流)900m→(15分)奥の二俣(大滝下)980m
→(10分)3段15m滝上1020m→(30分)沢のドンヅマリ1205m→
(3分)榛ノ木丸からの仕事道1240m→(40分)大杉沢出合の林道(ヘアピン)
→(5分)魚止橋
2007年12月16日
★大杉沢は旧丹沢観光センターのキャンプ場の最上段のさらに上の段に左岸から涸れた堰堤で出合う沢だ。旧観光センターの敷地越しに対岸を見下ろすと、
コンクリートの堰堤2段を構えて石ころだらけの押し出しが見える。水流はない。
★現在観光センターは営業していないから敷地に踏み入って対岸に渡ってもいいが、堰堤を努力して越す意味はないから、私有地であるセンターの敷地にはあえて立ち入らないほうがいい
だろう。
★地図を見ても分かるように、この大杉沢に入るには林道の魚止橋を渡って砂利道を進み、道がヘアピンになる所からから降りればいい。ヘアピンの所から上流に向かって斜めに下ると、コンクリ堰堤2段と石積み堰堤1段を越えた所に簡単に降り立てる。
★下降点の目印としては、この位置が榛ノ木丸からの小尾根の痩せた末端にあたり、しっかりした登下降の踏跡がある。ここに沢に降りる踏跡もあるので、ここから沢に降りる。数時間後にはここに下山してくることになる。
★地元の林業関係者や釣り師の話でも、この沢は昔から水流はないそうだ。しかし岩はよく磨かれている。
台風や豪雨のときだけ流れるそうだ。もしこの沢に水流があったなら傾斜も急でチョックストン滝が多いので、かなり困難な沢登りを強いられることになるだろう。
★沢に降りるとすぐに4段ナメ滝で、下2段小滝の上の8m滝は中央から右に移って抜け、その上の幅広10m滝は中央から右、さらに中央を登る。この上でさらに10mナメ滝があるが、乾いているので簡単
、立ったまま登れる。
★初めのナメ滝群を過ぎると傾斜が少し緩み、沢床が一面岩で30m以上は続く一枚岩の白く磨かれた見事なナメが現れる。もっとも水流による溝や凹凸があるので、普通にはナメと言わないのかもしれない
。
★この大ナメ上で右から涸れた沢がゴーロで出合うと水がほんの少ししみ出た15mの大岩風の滝となる。遠目には大岩が転がってできたように見えるが、近づくと大きな岩壁であることが分かる。
★この先で岩に塞がれたチョックストーン滝が2段続く。1段目3mは右の岩壁に這い上がり、2段目4mは右壁のバンドを登る。(写真では3mチョックストーンが写っているが、すぐ上の直方体っぽい大岩は2段目のチョックストーンで結構巨岩だ。)
★2段CSを登ると、沢は最近崩れ落ちたらしき巨岩の転がりで行く手を阻まれる。上を見上げると右岸岩壁が崩壊した跡が鮮明で、こんな大きな岩がコロッとでも動くと人間なんてひとたまりもないので、急傾斜に喘ぎながらも不安定な岩を揺るがさないよう押さえ込んで
左岸寄りをスタコラ通過する。
★左からのルンゼ状スラブを過ぎると、またまた大滝が3段続く。どれも一見大岩のように見えるが、一枚岩の岩壁だ。初めの8mは右を、次の8mは左を、最後の5mは真ん中を登る。
★この沢はどこまで登ってもゴーロの河原はなく両岸岩壁に囲まれており、息つく間もなく小滝が続く感じだ
。この連続するナメ滝郡を過ぎると、かなり大きな岩がごろごろして
あちこちに岩小屋のごとき空間ができている急傾斜の巨岩帯になってくる。
★初めの岩小屋群は巨岩を避けて迷路のようにルートを選び、次は左岸が崩れた巨岩崩壊の小滝群を越えると、上空はもっと大きな巨岩に覆われる。沢の上方からなのか側壁からなのかは分からないが、とてつもなくデカイ巨岩(岸壁そのものだ!)に行く手を塞がれる。両岸も大岩壁で、岩の重なりがどこで切れてどこで重なっているのか皆目分からない状態だ。
★行けるかどうか分からなくても、たやすく高巻できそうな地形ではないので、巨岩の狭間を縫って登ると、自然に右岸(上の写真の3段目一番左)の大チョックストーンに行き当たる。
★一番下の段は、右岸の岩壁を利用してツッパリで体を押し上げるが、かなり難しい。次の段は、緑に苔むした側壁と大直方体を突っ張って登るが、ここは比較的簡単。
★最後の3段目は、以前は直径8cm、長さ1.5mぐらいの枯れ枝があったのでこれを1mぐらいのところで折ってうまく足場にできたのだが、この棒杭がなくなっているのでかなり難しい。落っこちると一番下の段まで落ちてしまいそうだ。かといってここからまた下の段まで降りるのはもっと怖い。仕方なく強引に登る。滑りそうな右岸壁のかすかな凹凸を利用して少し体を上げたら右のCSに体を押し付け、完全に足と体のツッパリでジリジリと体をずり上げ、ここからかなり難しいが両手両肘をCS上の岩に張り付けて、ひざを持ち上げて岩の上に這い上がる。スリップすると間違いなく後頭部から墜落しそうだ。事前に長さ1mぐらいの倒木を拾っておくのが賢明かもしれない。(この3段CS通過は11月23日)
★ここの通過にはこのルートしかないと思っていたが、もし這い上がれない人と一緒だったら別ルートを探さなくてはならないだろうと思い、巻くルートを探してみた。ここのスーパー巨岩郡に行く手を阻まれたら、自然とこの右岸のCSに導かれるが、途中で真ん中の巨岩の重なりの間に空間が開いている岩に這い上がる。この空間は手前に硬いブッシュが生えているので直登せずに、ここからさらに右へスーパー巨岩の基部を回り込んでもう1つ巨岩の下を回り込むと左岸の泥斜面に出る。ここを這い上がってすぐに左手の台地状尾根に乗り上がると、3段CSの上の台地に飛び出せることが分かった。(このルートの発見は12月16日)
★巨岩帯上の台地は休憩適地で、旧観光センターの宴会棟が眼下に望まれる。
★少し行くとかすかな水流が現れる。直前の天候によって水量は違うようだ。水流の中に傾斜のない5mチムニー滝が現れる。かなりヌメっているが、フェルトわらじを付けることなく、また水流に足をつけることなく両足のツッパリで登れる。ここは、右岸のバンドを通過することもできる。
★左から沢が入ると、またまた巨大な4mチョックストーンだ。2年前には左壁を巻くように登ったようだが、CSの左を這い上がることができる。しかしかなり難しい。
★このチョックストーン上で
、右の岸壁のような巨岩(巨岩のような岸壁)の先で右から沢がCSを抱えた狭い窪みのように出合う。
正面には深く食い込んだゴルジュが伸びている。ここが二俣だ。直進の左俣については「大杉沢左俣」のページを参照のこと。沢床の高さや谷の切れ込みからすると、正面
(左俣)が本流のように見えるが、本流は右だ。
★小さなCSを越して沢が左に曲がると、谷は大きく開け大スラブが広がる。このスラブが奥深くまで伸びていて、こちらが本流だと納得できる。
★傾斜のかなりあるスラブ滝を越していくと、左岸の立った左は大スラブのチムニー滝5mが構える。奥には大滝がドンヅマリ風に構えているのが見える。チムニーを簡単に越すといよいよ大滝だが、どう見てもドンヅマリにしか見えない。先月に来たときは、これはドンヅマリだろうと考えて、右端にある顕著なルンゼ入った(こちらは下の項を参照)。
★しかし、ここは奥の二俣ともいえるところで、下からは上に潅木が生えていてドンヅマリにしか見えないこの大岩壁が大滝で、落差があるので落口上の谷の切れ込みが見えないのだ。
★この大滝は下半分は傾斜も緩く、中央のクラックを簡単に登ることができる。クラックにしたがって中央から右に、右から中央へと登って、クラックがなくなるところで、その上がのっぺりした丸みのある落口のため後一歩が這い上がれない。仕方なくクラックの右端まで戻って右沢のルンゼとの境界の草付きカンテを越して、ルンゼを少し登って、すぐに左の泥つき小尾根に這い上がる。すると、目前に大滝の落口があった。あのドンヅマリの岩壁がただの岩壁ではなく大滝であったのだ。この大滝は2段になっていて、丸みのある落口は下段の落口で、その上で垂直5mの2段目が構えていた。下からは上の段5mは見えない。下の段と合わせてこの大滝は25mぐらいだ。
★この大滝の上に15mの大滝がある。この沢では一番滝らしい形をしているが、3段になっていてどれも難しくはない。
★この後も岩床がどこまでも続き、小滝がいくつも現れる。
★沢の傾斜が緩むとやっと沢らしい雰囲気となってゴーロが現れる。
★沢が左に曲がって4mナメを過ぎると、岩床もザレ混じりとなって、広いカール地形となり、沢の源頭は正面のザレに消えていく。このカールの底からあえて急傾斜の正面を登るまでもなく、左の斜面を左へ左へと獣の踏跡を辿ると、3分程度で仕事道に達する。
★この仕事道は、榛ノ木丸から魚止橋への道だが、5分も登ると大平へのかすかな踏跡のある道と合流する。
★魚止橋への下降路は「大杉沢左俣」のページを参照のこと。
大杉沢右俣(本流)右沢
コースタイム(右沢)
奥の二俣(大滝下)980m→(7分)ルンゼのツメ1030m
→(13分)尾根上踏跡1080m→(30分)榛ノ木丸からの道に合流1280m
2007年11月23日
★奥の二俣で右の枯葉の詰まったルンゼに入る。難しくはないがかなり直線的に急傾斜で気の抜けないと登攀を強いられる。30mぐらい登っていくとルンゼは右へ右へとカーブしていくが、途中で本流の大滝を見ることのできないまま高度を上げていく。
★枯葉の下の岩が泥に変わっていくとさらに傾斜は増すが、すぐ上部に稜線(尾根)が見えるので、左の樹林帯に逃げて立木を頼りに急斜面を登っていくと尾根上に飛び出す。尾根にはかすかだが踏跡がある。この踏跡は大平へ続くのだろう。この道を降りると車が回収できない。
★魚止橋への下降路は対岸(南)の尾根にあるから、かすかな踏跡を辿ってこの尾根をまだ200m以上も登らなければならない。
★この尾根は痩せて急で、途中で左眼下に大杉沢の涸れた谷底が見える。ドンヅマリの奥に本流があったことを思い知ることになる。
★喘ぎ喘ぎ登ってやっと榛ノ木丸からの下降路に合流すると、大杉沢本流源頭のカールが見える。