あの山この沢
丹沢、神ノ川矢駄沢右の無名沢
矢駄沢右俣と記されることもある最下部の右の沢、
流程は短いが楽しく登れる大きな滝が連続する沢
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コースタイム
神ノ川ゲート550m→(5分)矢駄橋560m→(5分)堰堤
4つ目手前の無名沢出合585m
→(10分)F1大
滝上630m→(5分)F2、8m滝上660m→
(5分)二俣、左2条10m滝、右2段15m滝F3下690m右へ→(10分)10mナメ滝上720m
→(10分)ゴーロの中の二俣780m→(13分)右の尾根の植林帯へ840m→
(5分)植林帯の尾根のテッペン860m→下降開始→(10分)尾根の植林帯末端680m
→(13分)神ノ川林道560m→(5分)神ノ川ゲート
2006年7月8日(2007年8月25日)
★神ノ川ヒュッテ先の車止めゲートから神ノ川林道を5分ほど歩くと矢駄橋に至る。ここが水量の多い矢駄沢だ。橋の手前でガードレールを跨いで旧道の痕跡のある右に入り、旧道の橋を渡らないで左岸沿いに踏跡にしたがって
沢沿いに谷に入る。
★よく見ないと数が分からないが、堰堤3つ過ぎて4つ目の大きな堰堤が現れる。沢沿いの山道もこの堰堤手前で、右から入る小沢を越すため、少し小沢に入り小沢の堰堤を通過するようになっている。この小沢が、今回遡行した「矢駄沢の右の無名沢」だ。
★この無名沢のことを「矢駄沢右俣」としている記録もあるが、地図で見ても分かるように、流程も長く水量も多いこの矢駄沢の「右俣」とするには、この沢はあまりに距離も短いし水流も速く消える。丹沢主脈の稜線どころか、上の神ノ川林道までにも到達していない枝沢だ。
★本来の矢駄沢右俣とは、本流のF1・F2とされる12m大滝、10m大滝の先20分も進むと、正面が大崩壊して沢が左に直角に曲がる(曲がった所に7m滝がある)が、この大崩壊で今は大堰堤しか見えない正面の谷のことだろう。この谷は、主脈稜線の小笄の少し犬越路寄りに深く食い込み突き上げている。もっともこれを小笄沢という人もいるようだが、上の林道からの大崩壊で遡行価値のない沢ということで、もはや「右俣」の名称も不要な沢になってしまったともいえなくもない。
★本流は、さらに上流の林道直下で二俣に分かれ左に直角に曲がるが、ここのやはり巨大な堰堤で正面から注ぐ沢は大笄沢(オウコウゲサワ)と名付いてる。
★矢駄沢本流はこの先で稜線まで右に大きく分かれる谷はないので、今回の右の無名沢を沢登り対象の名称としては俗称・通称の「右俣」としても誤解はないのかもしれない。
★矢駄沢本流については「神ノ川矢駄沢」を参照のこと。
★さて、堰堤4つ目手前の小沢の出合で沢支度を整えこの右沢に入ると、小滝を越してすぐに20m大滝F1が聳える。水流は3条に分かれて落口は右の方ほど難しそうに見え、上部は左ほど登りやすそうに見える。しかし、左端は下部が取り付けそうもない。結局水量の少ない右の水流沿いに中間部(写真で右の水流の始まる位置)まで登るが、ここからは真上はハングしていて直上できそうもないので、水流を左にトラバースして左の水流沿いを登ることにした。写真に写っている最上部右ののっぺりした岩壁を抱え込むようにして左へ移動するが、足場は外傾しているし、ハンドホールドも乏しいので非常に怖い。落水をまともにかぶりながら約1mも斜上すると足場も安定する。後は真上にも、もっと左からでも簡単だ。
★写真に写っているのは下部3分の2ぐらいで、この右から取り付いて中間部を左にトラバースして左から上に抜けた後、さらに上にはすぐに2mばかりの小滝で終わる。落口は水流が完全に2条に分かれて流れ込んでいる。浮石が多いのでうっかり転ばないように登りきらなければ危ない。
★この中間部(右の水流の始まる位置)から右の泥のルンゼを登って小尾根を乗っ越すような踏跡があるようにも見えた。落口からも、小尾根を乗っ越した後上流に斜めにずり下がるらしき踏跡が見えた。
☆4行目左端の写真 水量が少ないと3条に見えないようだが、中央水流の右の壁にも水流はある。このルンゼは簡単に登れる。最上部で外傾しているバンドを伝って水流中央にトラバースする。右の泥ルンゼを高巻く場合は、ここから岩壁に沿って登って木の根っこに掴まって早めに岩壁に移れば、立木に掴まりながら滝上に斜めにスムーズに降りれる。(2007年8月25日追記)
★所々きれいなナメが現れ、続いて左岸に大スラブが現れる。この大スラブはそれほどは切り立ってはいないため上部からの落石や苔でそんなにはきれいに見えないが、丹沢では珍しい景観だ。
★このスラブの最後に左から8mの幅広の滝でF2が落ち込んでいる。沢に傾斜があるので奥の方(滝の右端)ほど落差がないわけだが、左端の乾いた岩壁の方が登りやすい。
★すぐに右から小沢が滝で出合い、さらに4m2段滝や4mナメ滝を過ぎると二俣となる。この二俣は、左は2条10m滝、右は2段15m滝となっている。この右滝がF3ということになる。
★左滝と右滝の合わさる凹角部分が右俣のチムニー状水流になっているが、この部分がいちばん登りやすそうだ。ここを登って、右滝の中段から左滝の落口に這い上がれば、左滝は登り終える。
★しかし、この左滝上で左俣の上流を眺めると、すぐにゴーロとなってつまらなさそうなので、一旦右滝中段テラスまで降りて、右俣を遡行することにした。
★右俣のこの右滝上部7mは完全なチムニーで足場も沢山あるので、かなり立っているがそれほど難しくはない。しかし、側壁がぬめっているので注意が必要だ。
☆4行目左から2番目の写真 水量が少ないと、左沢の滝は左端には水流がない。
★このすぐ上で10mナメ滝があるが、これは簡単。
★10mナメ滝上にも幾つが小滝があるが、沢はすぐに急傾斜のゴーロとなり、じきに水が涸れる。
★水流の涸れたゴーロを登っていくと、右手の尾根の植林がだんだん迫ってくるが、側面がザレているので尾根にはまだ取り付きにくい。
★ゴーロから泥混じりの溝になる頃、奥の二俣に達する。東下駄沢と下駄沢の中間尾根を下降する予定だったので、ここはなるべき右へ向かえばよいと考え右に入ると、ほとんど泥の溝になってきた。
★右手の植林帯がグングン目の高さに近づいてくるが、泥壁を登るのは厄介なので、さらに溝をつめると、泥溝から安定した岩コロの斜面に変わってきて、沢は藪に消えてしまいそうになったので、ここでやっと右の植林帯の尾根に取り付く。2〜3m泥壁にズリズリすべりながらも尾根に藪漕ぎなく這い上がる。
★尾根のテッペンまで右にトラバース気味に進んでピンクテープを見つけ上部を眺めると、少し上で植林が切れ藪になっている。下部を見ると見事に下刈りされた植林帯だ。藪を漕いで上の林道に抜けるのも面倒なので、踏跡らしきものは見当たらないが、下刈り跡も古くはないので一直線に急な尾根を下降することにした。
★左に東下駄沢の流れの音を聞きながら高度差にして200mぐらい快適に下降すると、植林帯が尾根から左に外れていっている。神ノ川林道は東下駄沢から矢駄沢までの間は、山側が3〜5mの高い擁壁で固められているので、うっかりその間に降り着いては林道に降りれなくなる。この尾根のテッペンの植林帯が切れる所でいつでも遡行してきた沢に下降できるよう右へ右へと踏跡を探すと、尾根自体が右へ右へカーブしていて、雑木林の尾根に忠実に道らしき踏跡があった。仕事道らしき踏跡は尾根に忠実についているが、すぐ真下に神ノ川林道が見える位置で、矢駄沢出合方面にトラバースするようになる。
★ガレた斜面のトラバースをはじめると、すぐに案の定林道脇の擁壁がすぐ左下に見える。トラバースの踏跡もガレに消える辺りで擁壁際に電柱があり電柱登りの足場のボルトが見えるので、この電柱を利用して林道に下降することにした。
★林道に下りてみると、あと10m程度で擁壁の切れ目があった。さらにそこから10mぐらいで林道の旧道が始まる。正規の仕事道はこの辺りにあるのかもしれない。
★登り70分、下り30分ではあるが、登り甲斐のある滝のあるミニ沢登りだった。
(以下、2007年8月25日追記)
☆二俣から左沢に入るとゴーロが続くが、ゴーロの下にはきれいに磨かれた岩床が見られる。水流は10分ぐらいで涸れる。
☆ゴーロは徐々に傾斜を増し、そのうちガレの溝状になるが、右壁(左岸)が立った岩壁になっているので右の尾根にはしばらくは上がれない。ガレに泥が混じってきてドンヅマリ状になると、右の尾根に這い上がれる。
☆這い上がった尾根は猛烈に急峻で、既に標高850mはあるので、無理して直上して標高900m付近の犬越林道に出るほうがいいかもしれない。
☆右沢をつめた後の下山の尾根に向かうには、尾根に乗った後、急峻な尾根を3つトラバースする。急斜面や沢の源頭部らしき岩礫の窪み地形をトラバースするようになるので、尾根を下っては小沢源頭部の泥ルンゼを越して隣の小尾根に乗って、また小沢に下って小尾根に乗って下っていったほうが楽だろう。二俣下の流れが見えたら沢に下って、大滝のみ左の尾根から左に下れば本流の右俣出合下部になだらかに降りれる。
☆参考タイム(2007年8月25日) 二俣→(20分)奥の二俣680m→(20分)沢の源頭部850m→右の尾根に乗って下降→(20分)二俣下の河原→沢を下降→(20分)矢駄沢本流(右俣出合)