谷川岳、谷川ヒツゴー沢

滝、ナメ、瀞がコンパクトにまとまった谷川岳を代表する沢

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ヒツゴー沢出合、左は オジカ沢、正面が中ゴ ー尾根、バックは幕岩	Ｆ１、７m滝が現れる 右の乾いた岩を 簡単に越せる	F２逆くの字滝20m	７m直瀑、凹角を登る	下部第一ゴルジュを 抜けると流れは穏や かになりナメが続く
スラブの小滝が連続 し、釜に入ったりへつ ったりで快適に遡行	大きな釜を持つ５m滝 右のバンドから取付き 滝を落口にトラバース	３段のナメ滝手前の ８m滝、左から越せる 流心から左へも登れる	遠くに３段くの字滝	３段20mのくの字滝 バンドを伝って流れ に入り上部は岩登り
最狭の瀞、跨ぐと落ち る。体全体（手は左岸 足は右岸）で突っ張る	中間部ゴルジュの出 口には６m滝、落口は 流れに入って抜ける	奥に逆層の10m滝	第二（上部）ゴルジュ 入口の逆層10m滝、 右側が登れる	狭いゴルジュの中に 小滝が連続するが、 難しいところはない
20mトイ状滝	トイ状滝の上には２段 二条の５m滝、左から 容易に越せる	ゴルジュ出口の８m滝	ゴルジュを過ぎると 周りが草原状のゴー ロの中の流れとなる	最後の垂直な10m滝
稜線まではまだ長 い。ゴーロとナメ小 滝がまだまだ続く	天気がよければもう 稜線が見えそうだが、 ガスで何も見えない	最後まで小滝がある	草原の中の溝を最後 まで」忠実にツメて行 くと、藪漕ぎはない。	岩ころの溝をツメめて ガレや草付きを這い上 がれば稜線に達する

コースタイム（ ５人、途中１人負傷）
谷川温泉駐車場585m→(70分)二俣800m→(10分)ヒツゴー沢出合815m→
(10分)F１、7m滝860m→(10分)F２逆くの字滝上910m→
(45分)３段20mくの字滝下1050m→(50分)第２ゴルジュ10m滝下1125m→
(25分)20mトイ状くの字滝1190m→(25分)第２ゴルジュ終了点1215m→
(20分)10m垂直滝下1300m→(60分)完全に草原の中の窪みとなる1550m→
(70分)稜線1800m→(15分)肩の小屋1900m→(５0分)熊穴沢避難小屋1480m
→(30分)天神平ロープウェイ乗場1320m

2003年９月６日
★ヒツゴー沢に来るのは二十数年ぶりになる。二十数年前足しげく谷川沿いのいろんな沢に入っていたころ、ちょうど谷川温泉から二俣までは二人並んで歩けるほどの立派な登山道があったのに、先週はあった登山道が今週は台風のせいで濁流に洗われ流れ去って、牛首を過ぎて二俣まで流れの中を腰まで水に浸かってやっとこさ達したことがあった。それから二十数年経っているのに、冒険登山者の減少のせいか、このルートの復旧がなされていないとは思ってもいなかった。
★記録を見るとヒツゴー沢に入ったのは1981年の９月末で、この夏から秋にかけてタカノス沢や本谷に入っている。この年８月23日に台風15号で利根川支流小貝川が氾濫、９月16日の台風20号では大雨で前橋市内の利根川が氾濫している。このどちらの大雨で左岸遊歩道が流されたかは失念にも記録に残していないのでよくわからない。
★友人の話だと、今はもういわお新道を下ってくる人もあまりいないそうで、ましてや中ゴー尾根を使う人などめったになく、廃道に近いそうだが、今回行ってみると二俣から先中ゴー尾根方面の道は綺麗に草刈がされて歩き易かった。地元山岳会の方々に感謝感謝。
★その昔、二俣ではテントを５張ぐらいは張る広さがあったのに、もう幕営する人も少ないのだろうか、狭くなっていた。川に水を汲みに降りる踏跡もない。
★車を谷川温泉の駐車場に止め、牛首より先は河原の石ころを跨いだり倒木を跨いだり、もはやハイキングコースではなくなった谷川沿いの歩道を歩いていくと、二俣に達する。かつてはこのすぐ下の河原でお茶を沸かしたり休憩したりの人が必ずいたものだが今はのんびりできそうな場所ではなくなっていた。
★二俣から中ゴー尾根への道を10分も歩けば石ころだらけのヒツゴー沢出合だ。出合からゴーロをしばらく進むと、７mのF１だ。ここからは数え切れないほど滝やナメが連続する。どんなガイドにもF１、F２以外はF番号は書かれていない。どれを滝とすればいいのか分からないというのが正解だろう。
★シャワークライミングが主流ではなかったころは、F２は左のカンテから左を巻いて上に抜けていたのだが、ここでかぶり気味の岩をトラバースするところがこの沢の登竜門で、これで危なっかしい人は遡行をよしたほうがいいとされていた。今は、落水のしぶきを浴びながらルンゼの中を登っていく。濡れることさえ気にしなければ誰もが気楽に入れる沢になったようだ。もっと後で試されることになることも知らずに。
★長い間谷川岳近辺の沢から遠ざかっていたが、やはりこの沢はいい。奥多摩や丹沢にはない白くどこまでも続く岩床やナメ、側壁の岩壁、紺碧の瀞、そして何よりも明るさ、一度来たら病み付きになるに違いない。
★今回は同行した仲間の１人が、遡行を開始して早々第１ゴルジュを抜けた後、３段20mくの字滝手前の８m滝の手前の６mナメ滝で釜に滑落してしまった。リーダーが釜で泳いで遊んでいる時今回たった一回だけ先頭になった彼は滝の右の凹角を登り落ち口にトラバースするところで、笹薮を掴んで岩壁と笹薮の際を足場になぜかしないで、外傾した足場となるはずの岩にハンドホールドを求め、その下の苔でヌメっている滝壁そのものに足場を探していて滑落したのだ。幸いに片膝をしこたま打撲した程度で釜にすべり落ちただけですんだが、滑落した精神的ショックでその後の足取りは困難を極めた。
★ロープを出すべきだったという意見が行かなかった仲間から出たが、ロープを張るような場所でもないし、ロープを出すならあっちだこっちだと指示が出せていて所詮そんなルートは取らないだろうし、万一先頭のままロープを出していて右端にランニングビレーを取っていたら振られて側壁に激突していたことだろう。すんなり釜に落ちて最良だったように思う。
★問題はこんな所に来てまでフリークライミングの練習場のような感覚で遡行していることだ。沢に来て、１つの滝が登れたかどうかなんてどうでもいいことだ。水と戯れ、岩と仲良く付き合い、自然の地形に感嘆し、沢の源流を極め、楽しく稜線まで登れればいいのだ。笹薮を掴まなかったから落っこちたなんて馬鹿馬鹿しい限りだ。
★ヒツゴー沢の岩はフリクションがよく効く。ほとんどの滝もホールドになる岩がしっかりしていて快適な登攀が楽しめる。
★ヒツゴー沢は、最初から最後までロープの必要なところなどないだろう。最後の垂直の10m滝などは、「直登不能なように見える」と書かれているガイドもあるが、滝のどこまでを直登というのか人によって判断が違うにせよ、正面右の乾いた岩にルートは見出せる。これとてロープ不要だ。もっとも、ここは右の草付きにしっかりした高巻き用らしき踏後がある。ロープが必要なパーティならそちらを回ればよかろう。
★第２ゴルジュを過ぎると、小滝や河原歩きとなり、最後の垂直な滝が現れ、そこを過ぎると、天気がよければ前方に国境稜線が見えてくるはずだが、稜線まではまだまだ長い長い岩の重なりや岩床の小滝とゴーロの連続だ。最後の滝が標高にしてまだ1300m辺りだからまだ稜線まで500mは登らなければいけない。
★水も涸れ石ころの溝のようになってくるとあちこちに踏跡が霧散してくるが、最後まで忠実に窪みをツメていくと、縦走路直下10mぐらいの草付きをよじれば稜線に飛び出せる。縦走路を右に15分も登れば綺麗に再築された肩の小屋だ。
★今回の予定は天神尾根熊穴沢避難小屋からいわお新道で二俣に下りる予定だったが、負傷者しだいでは肩の小屋泊まりを想定したのだが、彼が降りれるというのでいわお新道はよして天神平スキー場のロープウェイを目指して下ることになった。文明の利器があるとついついその誘惑には勝てないものだ。

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