あの山この沢
丹沢、神ノ川伊勢沢
神ノ川最大の落差45mの大滝も直登できるのが魅力
稜線直下まで水が涸れず、藪漕ぎなしで稜線へ
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コースタイム
神ノ川ヒュッテ560m→(25分)伊勢沢下降点665m→(5分)伊勢沢出合615m→
(10分)2段10m滝F1640m→(20分)15m滝F2下715m→(5分)滝上735m→
(15分)三ノ沢・四ノ沢出合800m→(15分)2段15m滝F3840m→
(7分)45m大滝F4下860m→(10分)大滝上910m→(5分)五ノ沢出合935m
→(5分)右から滝950m→(5分)2段10mF5→(4分)二俣965m→左へ→
(8分)二俣1010m→左へ→(15分)いったん水涸れる1085m→
(10分)二俣(水流なし)1125m→右へ→すぐに水流復活→(2分)二俣→
右へ(すぐに4m滝あり)→(7分)5m滝1235m→(12分)水涸れる1300m→
(7分)主脈縦走路1350m→(8分)姫次1430m→(10分)袖平山1432m
→(45分)風巻ノ頭1077m→(35分)神ノ川林道570m→(7分)神ノ川ヒュッテ
2004年6月5日
★伊勢沢は、地元の林業関係者や猟師達の間では絵瀬沢(エセ沢)と呼ばれている。麓の津久井町青根在住の著述家山口文一さんの著書『山に立つ煙り』(神奈川新聞社刊)でもやはり「絵瀬沢」と記されている。
★神ノ川
林道を車止めゲートから広河原方面へとぼとぼ歩いて行くと、右に熊笹ノ峰への矢駄尾根登山道、次に左へ袖平山・姫次への登山道=東海自然歩道を分け、続いて左はるか頭上から何段にも重なる滝が目に付く。この滝は孫右衛門谷の滝(この滝の遡行はPhotoBBSを見て下さい)で、林道はこの先で孫右衛門トンネル、小洞トンネルをくぐり、崩壊を整備したほとんど水のない後坂沢を渡る後坂橋を過ぎると、曲ノ沢(ワタノ沢)に架かる曲橋を渡る。この曲ノ沢も小規模だが先の孫右衛門谷のような滝が見える。
★この曲橋を渡って200mぐらい行くと、林道は右にカーブする所で、左の路肩が少し広くなっている。路肩脇にポールが5本ぐらい立っていて、そのうち2本にスズランテープが付けられている。これが、伊勢沢への下降点の目印だ。
★ポール脇から急斜面を数歩下ると、踏跡はしっかりした道になる。小さな小尾根のテッペンに付けられた道を下っていくと、途中で左右へ踏跡が別れ不明瞭になるが、あくまで忠実にテッペンの道を下っていくと、神ノ川に降り立つ。正面に見えるのが伊勢沢だ。奥の深い沢としては意外と狭い出合だ。先の踏
跡が不明瞭になるところで右に降りていくと、伊勢沢出合のすぐ上流にある堰堤上に降りてしまう。堰堤脇から下流に降りれる。
★伊勢沢に入ると、はじめは割合いに大きな岩のゴーロで、谷は狭いが河岸段丘は発達していて、釣師達がかなり入っているらしく、水に浸かることなく歩ける踏跡もある。岩の重なりの小滝でも釜は大きい。
★2段10mの滝は手前に大きな釜を持っている。釜の左をへつって下段に取り付く。下段を登るとテラスになっているが、上段を登るためここで考え込むことになる。上段は下から見た目には二条だが、実は三条だ。右は水量の多いハングした落水以外に右端のルンゼからこのハングした落水の下に真横に流れ込む流れがある。右端のルンゼがいちばん楽そうだが、ここに取り付くにはハングした上段の水流をもろにかぶるし、下部でルンゼからの流れと上からの落水で猛烈な水流になっていて、水流に足をとられそうになる。水
量の少ない左端はホールドに乏しいが、こちらの方が水圧に負けることはなさそうだ。ビショ濡れになりながら足場、ハンドホールドを探して体を持ち上げる。そんなに大変ではなかった。
★15m滝F2は左端が登れる。しかし最下部が結構大変だ。上部に行くとホールドが減ってくるが、傾斜が緩むので這いつくばってずり上がる。
濡れているところはヌメっていて怖い。滝の左に泥をかぶったスラブがあり、ここに虎ロープがぶら下がっていて、これを登って巻くのが通常のようだが、このルートの上部で滝上部の傾斜が緩んだところに接するようになっているので、上部の登攀をやめたければ、ここで左に逃げれば大丈夫だ。
★F2の滝上で右から枝沢が滝を落としている。
★左から出合う三ノ沢は奥に黒い大きな滝が見える。20mも離れず四ノ沢が同じく左から出合う。本流はここで右に曲がって、ゴルジュっぽくなる。瀞は深そうだ。
★ゴルジュの奥にはるか上空から真っ白い水柱を落とし込んでいる大滝が見え始めたらF3が現れる。2段15mとされるが、傾斜があまりないのでそれほど高くは感じられない。右壁に鉄の鎖がぶら下がっていて6mmロープもセットされているが、これに頼ることなく右壁を登り、上の岩の出っ張りは左にトラバースして流れに入れば、右壁に設置してあるロープはほとんど必要ない。下半身は完全にビショ濡れになる。
★小滝を越すと神ノ川流域最大の落差を誇るF4の全貌が見れる。水量が多い時は二条になり、登攀のルートとなる左の凹角にも前回は少しだが水流はあった。なんと大きな滝か。しかし、
滝の下は岩屑だらけで、釜はない。滝下は広い広場になっていて、ゆっくり鑑賞するに持ってこいの立地だ。
★大滝は左にある顕著な凹角を直上する。ホールドは沢山あって難しくはない。所々立っているところもあるが、おおむね傾斜は緩い。凹角を一番上まで登ると傾斜が緩むが、ここからはさらにクラックを直上する。このクラックに錆びたハーケンやボルトがある。クラックを登りきるとコップの底のようなテラスだ。ここまで来るとさらに上まで登りたくなるが、一休みしたら、2,3歩戻って壁右側のリッジをトラバースして乗越す。テラスから見下ろすと、ハンドホールドはガバが沢山あって十分だがフットホールドが乏しいように見える
。しかしいざ取り付くと、細かいものが十分ある(ガバをハンドホールドにし足場はその下に見つける意味だが、ガバの位置に生えている細い潅木がツルツルに皮まで剥けているのは、多くのパーティーはこのガバをフットホールドにし潅木を手で掴んでいるのだろうか)。
★リッジに体を完全に預けてしまえばその向こうの足場や着地先が見えて、安定した移動ができる。リッジを越すと
足元が部分的に黒くヌメった段差をずり上がる。ずり上がった所は落口すぐ下で、すぐ右にはすごい水量水圧で滝の水流が見える位置だ。水量が多いときは完全に水場になりそうな綺麗に磨かれた乾いたおわん状のこの窪みを抜けると滝上に達する。滝上は釜になっているので、這い上がって釜に落ちないよう、淵を横断して左岸に渡れば安全圏だ。この釜のところにビレー用ボルトが打ってあってシュリンゲも残置されている。
★先のコップの底のようなテラスからさらに上に抜けるルートもあるように見える。凹角を草付を掴んで上のリッジにずり上がるのだが、
草付きに今もしっかり踏跡はあるが、壁は垂直だし、昔は上にぐらついた潅木があったように思うが今は見当たらない。前回来たときはこのルートを取ったようにも思うが、この最後がいちばん怖かった。リッジに乗りあがったら、そこはちょうど上で書いたビレー用ボルトの壁上だから、落口の釜の淵にこれまた恐々下りることになる。この直上するルートより、このテラスから一段下がってリッジをトラバースして乗越すルートの方がうんと楽だと今回気付いた。
★前回(9年前)の記憶だと、今日の今日まで中央カンテのクラックを足を捻じ込みながら比較的スイスイと楽に登ったように思っていたのだが、今回来てみて前よりも滝壁に生えている木立が成長したのか、あるいは新緑の季節だからなのか、やたら岩肌の露出度が減ったように思えた。とても中央カンテなんてすっきり登れそうにない、藪漕ぎになりそうだ。だから、この滝を前にして「アレッ、こんなだったっけ?」と記憶との違いにしばし立ちすくんだのだが、さらに左の凹角が、なぜか自然に当然のルートのように思えてきたのだった。しかしこの凹角ルートはつま先をクラックに捻じ込みながらの登りなんてないから、やはり前回登攀したルートとは違うだろう。先の直上ルートとどこでつながるのか記憶があいまいだが、いずれにせよ、この滝はルートはいかようにも取れそうだ。
★F4上からすぐに五ノ沢出合だ。本流も五ノ沢も滝になっている。五ノ沢の滝を登る。5分も行くと、右から枝沢が細い滝で落ち込んでいる。
★F5は2段10mとされるが、5mずつの別々の滝だ。下の5m滝は水流を簡単に登れる。上の5mは右を登る。
★最初の二俣の右はすぐ奥に黒くヌメってそうな4mぐらいの滝がある。左に進んで、次の二俣も左に進む。
★一旦水が涸れて二俣となる。ここは、よく見ると右にこれまで何度も見られたワイヤーが伸びているので、右に進路をとる。すると水の音がしてきて、そのうち嘘のように水流は復活しそれも轟々と流れはじめた。と同時に3〜5m級の滝が幾つも連続するようになる。どれもほとんど直登できるが、たまにボロボロのものもある。大滝を登ったパーティーはもうこんなとこまで滝はイイヤと面倒になったのか、登れる滝のどこにもそばの泥の中に巻いた踏跡がある。水流が現れてからの沢の傾斜は急になる。
★★水が涸れてからの二俣を右に進まないで正面の左俣にとり、ひたすらガレの窪みを登っていくと、最後は急なボロボロの溝になり、さらにその上の急峻な泥壁を直登していくと、袖平山のベンチ前に飛び出せる。
参考タイム(1995年9月2日) 水の涸れた二俣→(40分)袖平山山頂
原小屋平にツメて姫次経由袖平山まではおよそ50分で、どちらも時間的には大差ない。
★すぐ上に稜線が見えるのに水流はなかなか消えない。あたりが緩やかな林になって、沢も傾斜がなくなり、小川のようになったら、急に水が涸れる。
★涸れた広い溝を進み、最後に泥の壁をちょっと登ると、背の低い笹の生えた疎林帯に飛び出す。まだワイヤーがあちこちある。少し登ると、主脈縦走路の原小屋平と姫次の中間ぐらいの位置に出た。
★この位置からは、原小屋跡、地蔵平を経て地蔵尾根を下っても、姫次、袖平山経由の東海自然歩道を下っても神ノ川ヒュッテまでの下山タイムはほとんど変わらないだろう。地蔵尾根の下降については「岩水沢」「仏谷」のページを参照のこと。