あの山この沢
丹沢、神ノ川仏谷
神ノ川最奥の蛭ヶ岳北西面に突き上げる仏谷は
大滝上流に滝が連続し、最後の大崩壊のツメが核心?
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コースタイム
神ノ川ヒュッテ560m→(45分)広河原725m→(10分)岩水沢出合720m→
(23分)仏谷出合790m→(20分)仏谷F1、5m滝下865m→(5分)滝上→
(3分)小谷出合890m→(20分)F2大滝(20m)985m→(10分)大滝上1010m
→(20分)3m滝1125m→(12分)F3、5m滝1165m→(7分)F3滝上1175m
→(10分)F4、7m滝1205m→小滝が続く→(7分)最後のナメ滝3m1235m→
(10分)水涸れる1280m→(20分)左右正面大崩壊1370m→少し引き返して→
(2分)右岸の尾根に取り付く1345m→木の根っこを掴んで枝尾根に這い上がる
→(35分)主脈縦走路1525m→(16分)縦走路から分岐1330m→
(7分)地蔵平(下降路分岐点)1350m→鹿落とし、カニの横這いを過ぎて→
(25分)第4峰1180m→剣の刃渡り過ぎて→(3分)第3峰(五葉松ノ峰)1153m
→(37分)岩水沢出合(金山谷)→(13分)神ノ川林道→(30分)神ノ川ヒュッテ
2004年5月29日
★仏谷出合、小谷出合までは「神ノ川金山谷」、「神ノ川仏谷小谷」のページも見てください。
★仏谷はその昔人跡未踏の谷と言われたことから付けられた名のようだ。その意味で仏のみぞ知る谷と考えれば、最奥の蛭ヶ岳直下の大崩壊地は孫悟空に出てくる魔界に似てるように思えてくる谷だ。
★神ノ川は広河原で右(左岸)から広大なゴーロと大きな堰堤で彦右衛門谷が合流して、それより上流は金山谷と名を変える。蛭ヶ岳を源流とする仏谷が神ノ川の本谷ではなく、蛭ヶ岳から主脈縦走路を約2km西に下った神ノ川乗越にツメ
上げる谷を名のとおり本谷とするようだ。
★広河原の林道から地蔵尾根登山道の標識に従って排水溝を下って神ノ川に降り、金山谷に入る。左岸伝いに進むと、岩水沢出合あたりから谷は急に狭くなってくる。地蔵尾根取付を過ぎるとゴルジュとなって、右折したところに金山谷F1とされる魚止ノ滝5mがものすごい水量と音で落ちている。
★金山谷F1は大きな釜の左の淵を伝って約1mほど2,3歩の距離を泳いで滝の左に取り付く。以前は胸まで浸かっていたのに去年は少し浅くなっていたが、今年は肩まで浸かっても足が届かなかった。
★仏谷出合までの金山谷は平凡な河原と小滝が続くが、流れは澄んでいてきれいだ。
★F1は、以前には太い倒木が掛かっていて簡単だったのが、1年前小谷に入る時倒木は流れ去っていたし、高巻ルートの右岸も足場となる側壁も崩壊して古くから掛かっていた麻ロープも途中でチョ
ン切れていて、結局滝上の大岩の右を抜けるのに大変な思いをした(小谷のページ参照)。
★右岸の高巻きルートに麻ロープはまだ残っているが、その位置まで上るのはかなり危険だろう。昨年は右岸が崩壊した直後だったが、今年はもう仰ぎ見る側壁上部も落ち着いている。しかし、ロープを掴んで滝上3mぐらいをトラバースする足場はなさそうだし、失敗すると滝壷まで8m近く落ちることになるだろう。
★やはり、素直に滝の右側を登ろう。シャワーを浴びながら大岩まで登り、滝淵の少し下に左足を安定させたら、右手は右の岩の出っ張りに突っ張って、右足を斜めの滝淵に滑らない位置を探して置く。左手は大岩の上のかすかなホールドを探せばある。右手で突っ張っているこの間ず〜っとお尻がシャワー状態だが、この日は暑い日でよかった。ちょうど体は滝壁から離れ斜めになった状態だ。右手のツッパリの反動で左足を割れ目の上に運び、右手も奥の方の直方体状岩を掴めばもう登りきれる。
★F1上で広い河原となり左から小谷が出合う。この広いゴーロを過ぎると、谷は狭くなって小滝が連続する。
★F2は右のガレを登り、スラブになった所で左上する草付きバンドがあるのでこれを辿ると、落口直上5mぐらいの小尾根台地に達する。バンドは草が茂っていて足場を見つけにくいが、あまり人が入らないせいだろう、どれもぐらついていないので安心だ。台地からは真下に降りないでほとんど水平にトラバースすれば危険なく沢に降り立てる。
★右からの沢が苔むしたスラブで出合う二俣を過ぎるとF3(5m滝)がある。登れそうもないので、左から巻く。左の小尾根の左が開けた急峻なザレとなっているのでここを這い登り、右手の小尾根に移る。しかしこの位置から真下の落口に下降するには懸垂下降となる。崩れかけた小尾根を乗っ越して沢側の細い潅木に掴まって斜め前方に滑り降りるようにするとロープはいらない。
★右からゴーロ状の沢が出合うと、沢はこの位置からは完全に行き止まりのような地形になる。右は涸れ沢だが、水流のある左は正面が白っぽい岩壁で覆われ、上を見上げてもどこにも切れ込み(谷)がなさそうなコップ状態だ。水が突如湧いてるわけではないので、直ぐ奥で沢は左折して滝がありそうな予感を持って、この二俣は小滝を越してゴルジュに突入する。
★はたしてゴルジュのすぐ奥で沢は左折し、ここに7m滝F4があった。この滝はシャワーを浴びながら水流左を登り、最後は水流の中をよじ登る。もしここを巻くとすれば、右の岩が崩れているルンゼだろう。もっとも崩落しそうな岩がいつ落ちてくるか冷や冷やモンの高巻となりそうだが、上に抜けられればすぐ上の河原には平らなままつながっている。
★F4上で沢は右折し、沢は傾斜も幾分ましてきて、小滝がいくつも現れる。
★水流も細くなり、沢の様相が白っぽいガレのゴーロに変わり始めると正面頭上に蛭ヶ岳の稜線と直下の大崩壊が見えてくる。しかし高度差にすると、頂上まではまだ400mも登らなければならない。
★両岸とも崩壊し異様な景色になってくると、うっかりすると側壁からも石ころがコロコロ落ちてくるので、のんびり休憩もできない。涸滝も岩が剥離するので無造作には登れない。狭い地形はすばやく通過しようにも、持つ手、踏ん張る足が崩れる。
★ここより奥へは大崩壊の見学程度にとどめた方が無難だ。あまり奥まで入ってしまうとそこから左の尾根に抜けようとしても、ルンゼのガレをツメるしかなくなり、初めのうちはガレですむのだが、そのうちガレる前のボロボロの岩となり、どこを掴んでもどこを足場にしてもガラガラと崩れそうで、目指す草付きに這い上がるのに一苦労することになる。
★また尾根らしき草付きに達しても、その尾根が上で崩壊して向こうの尾根まで刃渡りのような四つん這い作業が待っているし、そこから乗り移れない恐れもある。
★したがって、今回は大崩壊を程々に眺めて、深入りせず、そそくさと先ほど確認しておいたもっとも安全に小尾根の枝尾根に乗り移れる場所まで少し引き返して木の根っこを掴みながら尾根を這い登った。少し登ると鹿の踏跡や糞が見つかり、よくこんな所を地図もなく歩けるもんだと感心しながら、これなら間違いなく稜線から派生する疎林帯の尾根に抜けれると確信。1350m付近の谷底から1530m付近の縦走路まで約40分で抜けることができた。
★大崩壊地で上に抜ける尾根を探すには、25000図は持って行ったほうがいいだろう。
★前回来たときには、なるべく行けるところまでは行ってみようと、大崩壊のほとんどドンヅマリまで行って、そこから一番左の通称Aルンゼをつめてみたが、ルンゼは上部に行けば行くほど急峻になり、さらにガレが今にも剥離しそうなぼろぼろの岩の壁となって、横の草付きに移動する一歩一歩も冷や汗モンだった。かろうじて草付きや引きちぎれそうな潅木の根っこを掴めても、斜面や枝尾根自体がどこもかしこも崩れそうなので、本物の小尾根に到達するまで、相当緊張させられる登攀を強いられた。
★Aルンゼ手前のルンゼが切れ込んでいる地点、大崩壊地に入ったところあたりになる(今回はこのあたりですばやく取り付きやすい左の尾根に取り付いた)が、ここから登山道までは、もう少し奥までルンゼをツメた場合約1時間かかってしまう。
参考タイム(1997年5月10日)
Aルンゼ手前のルンゼ1350m→右へ→(15分)左のガレ(Aルンゼ)を登る1420m→(25分)小尾根1500m→(15分)登山道1585m→(15分)蛭ヶ岳1672m
★かなり疲労困憊したので、もう蛭ヶ岳頂上を踏むのはやめようと気弱になり、尾根上部の疎林が切れた草原の淵(すぐ下から大崩壊が始まっている)で大休憩をし、崩壊のすさまじさを見物。ここから蛭を目指すなら直上すればよいのだろうが、もう心は下山、真左に尾根を横切るように進むと登山道(蛭→姫次縦走路)に出た。数メートル進むと、登山道自体が大崩壊しかけている地点だ。仏谷の北側に食い込む小谷の上部にあたる。小谷もツメは仏谷に似ている。
★縦走路を北方に15分も下ると、地蔵尾根の下降路への分岐の道標がある。そこから約7分なだらかに登れば、そこが地蔵平だ。左に下降路分岐の目印のスズランテープがある。
道標がなくなっていた。
★最近、地蔵尾根を利用する登山者が増えてきたようで、踏跡はしっかりしてきたが、所々迷った人たちによる紛らわしい無用な踏跡までも増えているように思える。
★地蔵尾根下降の詳細は岩水沢のページを参照。
★先の縦走路到達点から地蔵尾根まで25分、ここから神ノ川林道まで80分、神ノ川ヒュッテまで30分、おおよそ2時間10分で下山できる。登り返しは神ノ川から林道広河原までだけだ。
★これに対し、姫次、風巻尾根経由だと登り返しが何度もあるので、2時間40分ぐらいかかる。
参考タイム(1997年5月10日)
縦走路→(40分)原小屋平→(20分)姫次→(10分)袖平山→(40分)風巻ノ頭→(40分)林道→(8分)ヒュッテ