あの山この沢
奥秩父 滝川豆焼沢
ホチの滝・トオの滝の中間部から遡行開始、
雁坂小屋から黒岩尾根を下降して豆焼橋に
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コースタイム(5人)
豆焼橋(出会いの丘)1050m→山腹トラバース道→(30分)最高地点1195m→
(4分)作業用トンネル(トウガク沢)1185m→(5分)最高地点(小尾根のピーク)1195m
→(15分)豆焼沢1110m→(35分)トオの滝1180m→(40分)二条8m滝1280m
→(30分)12mスダレ滝上1330m→(30分)50m大滝下1395m→(18分)6m滝上1470m
→(30分)4段20m滝上の上(ビバーク適地)1540m→(20分)両門の滝1620m
→(20分)1:4に分岐1665m→(35分)奥の二俣1835m→右→(20分)登山道1950m
→(25分)雁坂小屋1950m→(50分)ふくろ久保1680m→(30分)あせみ峠1495m
→(30分)広場(林道終点)1160m→(20分)豆焼橋(トンネル)1040m→(5分)出会いの丘
2004年9月26日
★以前足しげく笛吹川や東沢流域の沢に入っていたころ雁坂トンネルが開通すると裏側の荒川源流の入川や滝川に入りやすくなるぞと意気込んでいたが、いざ開通し偵察
まではしたものの他へ行ったりしててついつい奥秩父の沢から遠ざかっていた。
★今回、山仲間が今夏豆焼沢に行ったけど敗退したのでリベンジで再度行くというので、ホイホイとその企画に乗っかることにした。
★前々日から降ったりやんだりのあいにくの天気で、前夕には塩山あたりでは土砂降りとなり、こりゃ明日はダメだろうなと思いながらも、集合場所の雁坂トンネル向こうの豆焼橋を渡った所にある「出
会いの丘」に向かった。幸い埼玉側は降った形跡もなく、駐車場の片隅で早速宴会。
★翌朝早いから早く寝ようとの進言もむなしく、十三夜を肴に酒盛り。幸いにも大粒の雨が降り出しそうになってやっとお開き。「こりゃヤッパ、明日はダメかもね」と就寝の挨拶。
★夜半には一時ひどく強く降ったりした雨が早朝4時過ぎには霧雨なのかガスの中なのか分からないほどの靄に変わり、こちらはどうしようかと悩んでいるのに、もう当然に出かけるぞっと身支度してる仲間達。歳取ると嫌だね、こうもがむしゃらに予定貫徹しか考えられない
とは。仕方ない沢までは降りてみようか、と年寄りに従うことに。
★出会いの丘脇のヘリポートの向こうの草むらを7〜8mかき分けると、しっかりした登山道があり、すぐに幅広い道になる。トンネル工事の時には車も通っていたのかもしれないぐらいの幅だ。ほとんど平らなこの道が消えかかった所から急なジグザグの登山道になり、何でこんなに登るのかいい加減嫌になったこ
ろ最高地点に達し、少し下って、トウガク沢に出るが、このトウガク沢は完全に埋め立てられ、コンクリートの階段状水路だ。
★埋め立てられた平坦な台地に出ると、目の前に扉の閉じたトンネル。ちょうど雁坂トンネルの高さまで登ったことになる。雁坂トンネルの工事用のトンネル跡なのだろう。沢は災害復旧の治山工事としてコンクリの溝になったのではなく、もともと
トンネル掘削で出る土砂を捨てるため、トンネルの脇腹を突き抜かせて、手っ取り早く谷を埋めたのだろう。そして、元の沢の谷底のはるか上で新たに水路を創ったのだろう。
★このトンネルから15mぐらい下ってまた山の斜面に取り付き、5分も登ると顕著な小尾根に達する。道はここから山腹をトラバースしてトオの滝までつながっているのだろうが、そのまま進むと沢の下流部の滝場をすべてエスケープすることになるので、この小尾根からはるか下に見える沢に向かって木立に掴まり笹を掴んで一気に道なき道を下降。
★降り立った所は、下流のホチの滝上のゴルジュを過ぎたあたりのようだ。下降開始地点までかなり高度を上げてまでトラバースしてきた割には、ここからトオの滝までかかった時間から逆算すると、ショートカットしたことになってないことがこの後で分かる。トオの滝までトラバース道を行くと時間の短縮になるわけだが、出
会いの丘からこれまたコンクリに固められたワサビ沢を下って豆焼橋直下から遡行開始して途中の第一ゴルジュ・ホチの滝などを省略しなかった場合よりも時間がかかったことになった。
★トオの滝までは2m〜4mぐらいの小滝と綺麗なナメが続く。
★2段8mのトオの滝は、下段の左壁の斜上するバンドを登り、中段の大木を跨ぎ、上段の左を攀じ登る。巻道は、下段左の急峻なルンゼ状を登って、小尾根に上ってしっかりしたトラバースルートを水平に進めば自然に上段の河原に降りられる。
★3m〜5mの滝をいくつか越して行くと、二条8m滝となる。水量が多ければ二条になるようだが、今日は霧雨が降り続いているものの二条にはなっていなかった。水流のない右を登る。
★この後も5m〜8m級の滝をいくつか越すと、12mスダレ状滝が、ちょうど沢が左折するところにかかっている。一番手前、滝の左端に簡単に登れるルンゼがある。一番奥、滝の右端のルンゼか、その手前の壁を登れるようだがヌルヌルにヌメっている。滝の前はちょうど滝を正面に見て背後の壁が崩壊しかけているので長居は無用、二手に分かれてすばやく登攀にこしたことはない。
★ナメや小滝を通過すると、いよいよこの沢最大の3段50m大滝にぶつかる。靄に霞んで上部がよく見えない。天気が良くても最下部からは上部は見えないのだから仕方がない。すぐ左手の泥壁を木の根っこを掴んで攀じ登って高巻きを開始。しっかりした踏跡がある。少し登っていくと巨大な岩塔が頭上に現れ、これが大滝の側壁を形成しているのかと歓心する。岩塔の基部を左に巻いて登り着くと、すぐ下に沢が見え、ルンゼっぽくなったところを7mぐらい下降すると落口に立てる。
★大滝上の小滝は右を越せるが、その上の二条5m滝が登れない。大滝落口まで戻って落口右(左岸)から高巻く。ここも踏跡はしっかりしている。
★これでもかこれでもかというほど滝を越していくと、左岸がほんのちょっとした砂利の台地になっているビバーク適地もどき地点を過ぎ右折すると、今度は4段20m滝だ。左が登れなくもなさそうだが、天気も悪いし、安全に高巻くことにする。先のビバーク適地もどき砂利の河原まで戻り左岸を急登する。ここも岩峰がいくつか林立するが、踏跡はしっかりしているので迷うことなく落口に降り立てる。
★ここで、「ああここか、ビバーク適地は」と頷ける河原となり焚き火の跡もあるが、ホントに適地か、大雨が降るときわめて危険な場所には違いない。日帰り強行予定でよかった。雨天では安心して眠れないだろう。
★まだまだ滝を越して行くとやっと両門の滝だ。左俣の滝は2段20mのスダレ状滝、右俣が本流で60mの大ナメを形成している。しばらく見とれてしまう。どちらの滝もシュワシュワシュワーッと滝の幅いっぱいに水流が流れ下っている。また、上空の滝落口が靄で霞んでいる景観も、深山の幻想的な雰囲気だ。
★右の60m大ナメは水流の中心を2本足で立ったり四つん這いになったりして登る。岩一面に張り付いた深々した苔は意外と滑らない。一旦ナメが切れて、再びナメとなると5m滝でこの一連の大ナメ地帯は終わる。
★左から1:4で沢が合わさると沢は傾斜が増し、3m〜4m級の階段状に連続した小滝とゴーロの繰り返しで高度を上げていく。
★水流比1:1の奥の二俣を右に入り、さらに正面がガレになる所を水流のある左に入ると、猛烈に急峻な小滝の連続となる。どの滝もゴワゴワした苔が生えているので滑ることはない。
★あっちこっちにドラム缶や大きなバケツみたいなものが散乱して、そろそろ終了点だなと感じれるようになると、目前に雁坂小屋の水タンクが現れた。左右をよく見ると、登山道が沢を横切っているので、遡行はここで終了。ここはけっこう傾斜があって落ち着ける場所ではないので、ほぼ水平な登山道を左へ小屋まで25分歩く。もう小屋は営業してなかったが、素泊まり用宿泊施設だけは開いていたが、そんなに寒くはないので小屋前で大休止、下山準備。
★小屋の一番東端に「豆焼橋8.2km」と標識が出ていた。この黒岩尾根経由の道は、昭文社の登山地図には一切描かれていないが、どうしてどうしてしっかり整備された登山道だ。国土地理院の25000図ではしっかり出ているが、この25000図はまだ雁坂トンネルが開通する前の作品で、豆焼橋までしか描かれてなく、出会いの丘や工事で出来た新しい道が出てないので若干頼りない。
★黒岩尾根の登山道は、最後に車道に出るまでほぼず〜っと尾根のテッペンの右(下りの場合)を通っていて左手(はじめは北、八丁頭付近からは北西)は何も景色がない。もっとも今日は濃霧で左右前後とも何も見えなかったが。標識だけは埼玉県によって500m〜700mぐらい間隔で打ち込まれていて、迷うこともなく下っていけるが、途中、「ふくろ久保」とか「あせみ峠」とか標識に書かれていても、地図上どのあたりか分かりづらい。また、黒岩尾根を忠実に下降しているはずなのに、途中から標識には「火打石尾根」となっているのだ。
★尾根上から豆焼橋に下降するルートがあるわけではなく、結局25000図で見ると、滝川の豆焼沢出合付近つまり尾根末端の対岸の天狗岩トンネルに向かう道の1160m付近で豆焼橋(秩父トンネル入口)に至る中腹のトラバース車道が始まっているようだ。昭文社の登山地図では、釣橋小屋跡から描かれている黒い点線道が北上して1300m付近で尾根を下降することになっているが、ちょうどこのあたりが25000図に描かれているルートと合流する位置だ。
★広い砂利の車道に出るとおよそ20分で秩父トンネル出入口に達する。ここが豆焼橋たもとだ。橋を渡れば出会いの丘だ。