あの山この沢
丹沢、神ノ川ミクボ沢右俣
チムニー登りや恐怖の高巻き、猛烈な藪漕ぎは
あっても、遡行も下降も短時間の楽しい沢
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コースタイム
神ノ川ヒュッテ560m→(15分)神ノ川への下降点615m→(5分)神ノ川河原580m→
(5分)ミクボ沢出合→(6分)F1(6m)上630m→→(9分)二俣(F3直下)670m
→(15分)F3上710m→(10分)3段30mF4直下750m→(15分)F4上790m→
(2分)奥の二股800m→(20分)左からV字状スラブ910m→(4分)6m滝上920m→
(15分)源頭のガレ975m→すぐ左の小尾根末端に取り付き猛烈な藪漕ぎで直上→
(10分)東海自然歩道(風巻ノ頭直下)1065m→(30分)神ノ川林道→(8分)神ノ川ヒュッテ
2003年4月27日
◎「ミクボ沢左俣本流」のページも見てください。
★神ノ川流域の沢は流程が長いものが多いなかで、
ミクボ沢と一つ上流の小洞(コボラ)は風巻ノ頭(1077m)付近を源頭としてるため、高度差・流程とも短く短時間で遡行、下降ができる沢である。
★ただし、勾配が急なので、ほとんど平らな川原、石ころだらけの川原もなく、岩床それ自体が滝の様相で、初心者には向かない。水量は少ないので、2、3か所滝壺に膝まで浸かる所はあるものの、濡れたくない人向きだ。
★神ノ川林道のトンネルを2つ過ぎて、左手の小尾根のしっかりした踏跡を川に下ると、正面から入ってくるのが小洞
。ミクボ沢には神ノ川本流の川原を下り、堰堤を左岸のバンドを伝って下る。結構高度感があり、慎重に。
★右岸にわずかな水量で注ぎ込んでいるのがミクボ沢である。
★ミクボ沢に入るとすぐにトイ上のナメ滝があり、その上部にも滝が見え、見上げる首の角度からこれから先この沢の急傾斜を予感させられるだろう。
★6m滝F1は左から巻くが、はじめの岩壁登りの部分はチョロチョロと流れのある所がホールドが多く楽。岩壁の上は
崩れそうなガレを少し上部まで登って泥壁を右にトラバースするが、掴まるものがないので気をつけたい。炭焼き跡のある台地からはどこでも沢に降りられる。
★トイ状やナメ状の滝を過ぎると、2段10mチョックストーン滝(F2)となる。
中間のチョックストーン上までは右壁を登る。右壁取り付きで無理に上まで行かないことが肝心で、側壁に足場はいくつもある。上の段のかぶり気味の岩も容易に左へ抜けることができる。
★このチョックストーン滝の上ですぐ二俣となる。右俣の20mF3ははるか上から落ちてくる大きな滝である。
★これは直登できないので、滝のすぐ左にあるすごく抉れているルンゼ(チムニー)を約40m登ることになる。
★このチムニーは枯れ葉が詰まっているが斜度もあるので、まともに足場を探すより、完全に両手両足(たまに体)ツッパリで登るほうが楽だ。約20mぐらい登ると少し斜度がなくなりテラス状になっているので一休み。右手後の壁にビレーポイントになる立ち木が立っているが、手が届く距離ではない。
少し傾斜の緩む上部をさらにツッパリで登ると壁に突き当たる。
★突き当たった所から右にトラバースするが、かなり怖い。まずはすぐ右手にある直径7〜8cmぐらいの立ち木に掴まり体勢を変える。立ち木の上が幅20cmぐらいのバンドになっているが、その上は岩壁がハングしているので、とてもそこには立てない。結局バンドにはハンドホールドを求め、足場はバンドの下の岩壁に求めるしかない。立ち木を跨ぎ越し、岩壁に張り付いている草付きの泥に恐る恐る体重をかけてみる。意外としっかりしている。手は岩角や細い木の根っこ、ぐらついたブッシュの根元を押さえつけながら、股下にチムニーのはるか下まで見て、バンドから体を振り出し足場の安定した草付を求めながら6〜7m移動すると落口上に張り出している台地に辿り着く。
★予断だが、以前はあったもう1本の立ち木は、バンド上をトラバースするには邪魔になるのだろうか、誰かによって折られてしまっている。これが20cmぐらいの枯れ木になって、根元までぐらついている。このぐらつきがひどくなれば、あるいは根っこまで腐って抜け落ちるようなことになれば、今1本残っている先に触れた7〜8cmの立ち木の根元まで危ないことになるだろう。多分「岩屋さん」の部類だろう、こんなことするのは。「フリー」とかで岩には傷をつけない(と言いながらボルトを打ちまくるのは平気だ)けど木立はいいようにへし折ってしまえとでも考えてのことか。沢には沢のルールがあって、何も岩だけがホールドではないし、必要以上にロープでビレイしながら岩のぼりの練習を沢でする必要もないだろうに。
★滝の上はスラブ状の小滝が連続している。
★3段30mのF4は、前回は滝を怖い思いをしながら直登したが、歳をとったのかやめておこうと弱腰になり、左から高巻けることになっているので、高巻きコースを選択。ところがこれが生易しいものではなかった。
★滝を見て左手後方のルンゼを登り、すぐに木の根っことわずかの木立だけを頼りに小尾根を這い上がる。なかなか次の掴みどころがない。かなり登ると、さらに上は岩壁になっていて、もう落口が右手下方に見える。赤テープもあるのでトラバース地点に違いないが、かなり緊張させられた。ようやく滝上右岸の台地状に達すると、沢床に降りるのは簡単。高巻きに要した時間は15分。
★この滝を直登する方法 まずは水流左を登り一段目のテラスに、ここは滑りやすい。すぐ上のテラスには少しかぶり気味なので這うように攀じ登る。躊躇しているとズブ濡れになってしまう。最後の滝は完全にハングしているので、右にトラバース気味に
ブッシュを掴んで滝上の棚に至る。しかし、滝の右上に到達したのだから水流まで左に移動しなければならない。この滝上は外傾した岩棚にさらさらの泥がかぶっているだけで木立一本生えていないので、手の平を泥に突き立てながら落口までの左へのトラバースは滝そのものの登りより怖い思いをすることになる。
参考タイム (1995年11月4日)滝下→(15分)滝上 高巻きと時間的には変わらない。
★この滝のすぐ上で二俣となる。右はガレ沢。左に入るとちょっとしたゴルジュとなり、ルンゼ状の滝がいくつも続く。
★正面に幅広い乾いた滝が見えると左手に右岸(左)が綺麗なスラブ、左岸(右)は土砂崩れ同様に崩れたルンゼを見る。これが『丹沢の谷110ルート』に書かれているV字状スラブだ。以前は
もっと綺麗なV字の形態をしていたが、今は右の崩壊が進んでいる。しかし、上部に枝尾根の稜線がはっきりと見え、これを目指せば、遡行終了となる。枝尾根に達すると少し尾根を登った後、左にトラバース気味に斜上する。沢の源頭らしき所を通過するが、これは左俣の右沢源頭である。沢の源頭部状のところ以外は猛烈な藪漕ぎとなる。
参考タイム (1995年11月4日)V字状スラブ下→(5分)枝尾根→(25分)登山道1045m
★今回はこのスラブをやめて、もっと上流まで遡行してみることにした。6m滝は右端を登る。左の崩れかけた所も
登りやすそうだ。
★この後源頭のガレに至るまで標高差50mぐらい、時間にして15分ぐらいはまだまだチムニーや小滝が続く。
★一面ガレになったらすぐ左の目の高さの小尾根に上がる、5,6歩だ。踏跡はないが、尾根通しに直上するとそのうちクマザサの猛烈な藪漕ぎとなる。岩壁に突き当たると右から巻いてなおも直上すると、ひょっこりと風巻ノ頭
ごく直下の登山道に出る。藪漕ぎ約10分だ。
★V字状スラブで打ち切った場合と登山道に至るまでの時間はどちらも約30分で結局変わらなかったことになるが、早く打ち切った場合のほうが藪漕ぎ時間が倍以上になる。
★東海自然歩道を2、3分下ると、V字状スラブで打ち切った場合に飛び出てくる地点に至る。ここよりさらに2,3分下ると、左俣本流を忠実につめて出てくる地点に至る。