あの山この沢

大菩薩、丹波川泉水谷大黒茂谷
大菩薩嶺の北面に突き上げる大黒茂谷を遡行
丸川峠から牛首谷沿いの一般登山道を下山

画像をクリックすると拡大されます。


大黒茂谷出合
林道から笹を
漕いで降り立てる

巨岩帯始まる
ルートの見極め
が重要

巨岩下を通過する

ゴルジュ始まる

2段目の滝

3段目の滝

ゴルジュ出口の滝

大岩
ゴーロの中に
突然現れる

2段6mナメ滝

6m幅広ナメ滝
2段6m滝上に
連続している

大ナメ

1つ目の木橋

階段状2m滝

苔に覆われたナメ

2つ目の木橋

3つ目の木橋
2つ目の木橋から
の右岸道が渡る

12m大滝

6mナメ滝

5mナメ滝

ヤマトリカブト
濡れた岩壁に
咲いていた

ナメが続く

苔に覆われたゴーロ

丸川峠

林道牛首谷出合

大沼沢・牛首谷出合

コースタイム
三条新橋広場760m泉水谷林道(25分)小室川谷下降点880m
(35分)大黒茂谷出合上
1090m(2分)出合1080m(25分)堰堤上1140m
(22分)ゴルジュ上1190m(40分)大岩1265m(30分)木橋@1315m
(30分)木橋A1445m(13分)木橋B1495m(11分)大滝下1560m
(25分)奥の二俣1660m(30分)登山道1820m
(25分)丸川峠1675m牛首谷沿いの道(30分)泉水谷林道1350m
(16分)大沼沢出合1230m(17分)大黒茂谷出合上
(28分)小室川谷下降点(18分)三条新橋広場

2007年8月18日(1995年6月3日)
★2週間前に12年ぶりに小室川谷を遡行 したとき、同じく12年前には小室川谷を遡行した翌週に大黒茂谷を遡行しているので、今回もこの大黒茂谷を近々に遡行してみたくなった。
★連日35度を越す猛暑日が続き、比較的標高の高い沢登りに向いているはずだったが、この日だけはどんよりと曇り、東京では30度を割る涼しさとなり、大菩薩の稜線は低くガスが垂れ込めていた。それでも予報では雨にはなりそうもないので決行。
★三条新橋を渡って車数台止めれる広場の先で、今日は厳重に通行止めとなっていた。2週間前には多くの車が入っていたが、今日はここに駐車せざるをえない。ここから泉水谷林道をテクテク歩き始める。大黒茂谷出合上までは、林道を1時間も歩かねばならないので、これは誤算だった。
林道に3.5kmの標識を過ぎ、さらに500mぐらい進む(4km地点の標識はない)と、左手に車10台以上は止めれる広場がある。通行できるなら、ここに車を止めればよい。 林道を少し進んで、左手下に大黒茂谷出合が見える位置から笹を漕いで10mぐらい下の河原に降りるかすかな踏跡がある。
藪が嫌なら、林道をもう10mぐらい進むと丸川峠へ向かう大黒茂林道への下降点があるのでそこから下ればよい。 この林道は、大黒茂谷の左岸沿いの巡視路で、泉水谷本流を木橋で渡る。この木橋手前から沢に入れば、何の苦労もなく沢に降りれる。
★出合真上の林道には山側に車1台分の窪みがある。
大黒茂谷出合は比較的大きな岩の単調なゴーロだが、少し入ると巨岩帯となる。大きな岩は直径にして5、6m以上はある。この巨岩帯は巨岩が積み重なって、水流はアチコチからほとばしり、一体何処が流れの本流なのか分からないような場所で、かなりのルートファインディングを要するかもしれない。
巨岩帯全体は左カーブ気味で、右寄りが低くなっているので、なるべく左寄りに進めばそれほど進路に悩むことはない。巨岩に無理に登ろうとしないで、巨岩の横を回り込んだり、水流の流れる巨岩の下をクモの巣を払って潜れば、最後の巨岩帯出口付近で突っ張り登攀をして通過完了だ。沢登り入門の人にとっては、ここはルート取りの核心部といえるだろう。
巨岩帯を過ぎて大岩のゴーロを進んで行くと立派な堰堤に行く手を遮られる。堰堤右の際の泥斜面を登って越す。岩壁のバンドを伝ってなだらかに降りれば、懸垂下降などしなくてすむ。こんなところで懸垂しなければならないようであれば、早々に遡行は打ち切ったほうがいい。
★ゴーロを少し進むと、大岩の4m滝があるが、これは右から越せる。
しばらくすると深そうなトロの先に小滝があるゴルジュになる。左岸の水線ギリギリをへつって1段目1m滝の右に斜上するバンドに 乗る。滝上で右岸に跨ぎ越して、2段目1m滝の側壁上に直上して、途中で水流に戻る。側壁は階段状だが、濡れて外傾していて滑りやすい。側壁上をそのまま前進すると3段目上までバンドが伸びていて踏跡もそちらに向かっているが、途中のクラックから水流に1m程度下ったほうが楽しい。3段目は幅広の4m滝で、左端が簡単に登れる。
ゴルジュはこれでお仕舞いだが、続いて5mの幅の広い滝がつながっている。ゴルジュ3段目滝を登ったら、右に渡って右から越す。2段目からそそまま左を巻いた場合、左の水流を登ることになるのだろうか。
★左から小沢(カンリノ小屋沢)を合わせると、左壁(右岸)が立っている大ナメが現れる。
河原のど真ん中に顕著な大岩(巨岩だ!)を見て、さらにゴーロを進むと、お椀を伏せたような茶色の2mナメ滝に続いて、2段6mナメ滝、6mと続く。2段6mナメ滝は1段目1m、2段目5mで、釜は深い。左のガレの詰まったルンゼを登って、途中で水流際に出て ナメを登る。続く幅の広い6mナメ滝は、真ん中の右を登る。
このナメ滝の上は、きれいな50mナメが続く。ガイドによっては20mナメとか大ナメと記載されている所だが、手前で現れた左壁の立っている大ナメと混同して、遡行図では場所が曖昧なものが多い。
右から沢を合わせると、左岸下流方向から下ってきた木橋が現れる。標高からすると、この巡視路を右に登って行くと大黒茂 林道が、左岸沿いの道から泉水十字路・丸川峠に向かって谷から離れるちょうどそのあたりに向かっていそうだ。丸川峠方面から下ってきた道がこの先で谷沿いのこの道に合流し、こちらが正しい大黒茂林道と言うほうが正しいのかもしれない。
★1つ目の木橋を過ぎると、幅広の階段状2m滝がある。鍾乳洞などにある○○枚皿状の滝だ。その上は苔に覆われたナメが現れる。
★左から小沢を迎えると、沢の中に太いワイヤーが現れ、2つ目の木橋となる。この木橋の架かる巡視路は右(左岸)に下っていて、左(右岸)に登っている。
2つ目の木橋の先で二俣となる。左俣は幾分水量が少ないが、昨晩の夕立のせいか水流は涸れてはいない。
左俣に入るとすぐに1段目は壊れた2段の堰堤が現れる。右から越すと、3つ目の木橋が架かる。この3つ目の木橋は左(右岸)から登ってきて、右(左岸)に登っている。泉水十字路方面につながっているのだろうか。
古いガイドや遡行図では、大黒茂谷には木橋が2つ架かっていることになっているが、それらに記載されている橋は、2つ目 、3つ目の橋のことで、1つ目の橋は比較的に新しい橋のようだから要注意だ。もっとも、最近のガイドブックは見ていないので最近の遡行図にどう描かれているのかはよく分からない。
★12年前遡行したときの記録では、この橋(当時はこれが2つ目)からこの先にある12m大滝が見えた。あの時は新緑の季節だったから見えたのか、今日はガスっているので見えないのか、大滝はまだ見えない。
3つ目の木橋からゴーロを10分も進むと、大滝が現れる。右から登って、最上部で滝の側壁を1mほどトラバースして落口横を攀じ登る。トラバースでは滑らないよう足場をよく見て、その後はホールドは豊富。
★大滝上は、ずぅ〜っとナメ、ナメだ。ここからがこの沢の核心部と言えるだろう。
ナメを少し行くと6mナメ滝で、右の乾いた部分を登る。
またナメ、ナメが続き、大きな倒木の持たれかかった5mナメ滝となる。ナメ滝に気を奪われて分かりにくいが、このナメ滝の下が二俣だ。ここは右(左は大菩薩嶺にツメ上げる沢 だろう)を取って、ナメ滝に取り付く。左のカンテを登る。最上部は、踏跡は潅木の中にあるが、すばやく落口に出たほうがいい。この滝の上もナメ、ナメ、苔に覆われたフカフカのナメだ。
ゴーロになると、最奥の二俣となる。左は水流のほとんどない乾いたゴーロだ。ここを左に入ると、 また水流が現れ20分ぐらい登ると水は涸れる。その後は、最後まで乾いたゴーロと岩窪で、藪漕ぎが一切ないまま大菩薩嶺からジグザグ下ってきて道が平坦になり稜線がすぐ左上になるあたりの縦走路に飛び出す。 右へ入るよりもつめの標高が100mばかり高くなって疲れてしまうが、藪漕ぎのない快適な急登だ。
参考タイム(1995年6月3日) 奥の二俣→(40分)縦走路
1910m
★さて、奥の二俣を右に入って藪っぽいゴーロをなおも進むと、しばらくで水は涸れる(標高1720mあたり)。すぐに二俣っぽくなるが、どちらも藪の中のゴーロだ。なるべく丸川峠方向に進路を取るには、右に入る。
★この先は藪の中の溝になって、歩きづらくなってくる。そのうち溝らしくなくなってきて、周りを見回すと尾根のほうが歩きやすそうに見えるので、熊笹の中の獣道を追って 右の尾根に上がる。尾根上も一面熊笹だ。高度差100mぐらい背丈70〜80cmの熊笹を右上へ右上へと漕ぐと、縦走路に出る。下山を考え、右寄りに藪を漕げば楽だ。
★丸川峠からは、泉水谷方向へ下る。「泉水谷・丹波山村」とハイキング用の標識がある。高度にして70mぐらい、距離にして200mぐらいで、水の流れている牛首谷源頭部(丸川荘の水場かもしれない)に出る。石積みの堰堤もある。ハイキング用の標識はここから牛首谷左岸沿いなだらかな道を 下るように示している。
これを牛首谷沿いに下らないで、堰堤を渡って緩やかに登って行くと、泉水十字路を通り、大黒茂谷沿いの大黒茂林道に下りていける。大黒茂谷出合までの 距離は、大黒茂谷へ下って行くほうがいくぶん短くみえるが、泉水十字路までは登り返しが何度もあるし、大黒茂谷沿いの林道も登り下りがあるので体力的にはきつ く、時間的にも少し余分にかかる。分岐ごとに地図読みも必要になる。
参考タイム(1995年5月28日) 丸川峠(20分)泉水十文字1610m(30分)大黒茂谷沿いの道1300m(25分)泉水谷林道大黒茂谷出合1090m
この分岐を体力的にきつくない牛首谷沿いの道を下ってみる。ハイキングコースに指定されているだけあって、迷うことなく泉水谷林道まで下っていける。 林道に降り立ったところは以前は林道終点で泉水小屋(1346m)があった(5段目左から4番目、林道の写真の右側空地部分)のだが、今は跡形もない。写真の橋が牛首谷橋。三条新橋からこの牛首谷橋までが「林道泉水横手山線」といい、この橋から先は「泉水中段線」といって、約7km先で国道411号線(青梅街道)に突き抜けている。
★泉水谷林道を右に下って行けば大黒茂谷出合や三条新橋へ戻れるのだが、この林道は一部コンクリで舗装された部分や砂利を敷きつめた部分があって、林道歩きが長くてつらいといえばつらい。 硬い道路は地下足袋では疲れを感じさせる。三条新橋までは約7km、標高差600mある。
15分も林道を下っていくと、大沼沢橋を渡って大きくヘアピンを描いて右手の大沼沢が牛首谷と合流するあたりできれいな大ナメが現れる。両方の沢が大ナメで出合う。なんだ奥深く沢を遡行しなくたって林道そばにこんな素晴らしい景観があったのだ。

<home       <奥多摩top