あの山この沢
早戸川大滝手前本谷左岸無名の沢白馬沢右俣
白馬尾根の大草原に突き上げる本谷左岸に
大水量の多段滝で合わさる無名の沢の右俣
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コースタイム
本間橋(旧丹沢観光センター)585m→(20分)伝道685m→(40分)雷平810m
→(10分)白馬沢出合865m→(10分)連瀑帯終わり920m→(3分)二俣930m
→(10分)大ナメ滝下965m→(10分)大ナメ滝上1010m→傾斜の急な河原になる
→雪渓になる1040m→(25分)右から水流・左は3m滝1045m→左へ
→(3分)雪渓のクレバス下から滝上水涸れる1050m→ツメまで雪渓→(30分)大草原下端1255m
→右へ
1分で下山道→(10分)草原を少し登って休憩1355m→(7分)鹿柵1200m
→(20分)1つ目の鹿柵出口950m→(5分)雷平→(25分)伝道→(15分)本間橋
2005年4月17日
★早戸川
奥の大滝(早戸の大滝、落差50m)に行く散策道が雷平を過ぎ、左岸から右岸、右岸から左岸と渡渉し、また右岸に渡渉するところで、左岸に立派な滝で本谷に合流してくる水量の豊かな沢がある。この沢の名称は、地元の山仕事によく入っている人に聞いても「名前なんかねーよ」と言われる。滝の上ですぐ水が涸れる単なる
溝や窪みに過ぎない小沢に名称などないってところだ。
★このあたりではそんな窪みのことをボッチと言うことがあるらしい。窪みのある場所のことをボッチ
(窪地)と言うのであって、決して沢のことをボッチだとかボッチ沢とか言うことはないそうだ。市販の登山地図には早戸川原小屋沢流域にいくつか「ボッチ沢」の名称が記載されているものもあるが、出版社によって示している場所が微妙に違っていることからも推量できるが、
「この沢をボッチ沢と言う」なんて特定できる沢などどこにもなく、地元ではほとんど沢とはいえない程度のしかし顕著な溝など名前は付けてないそうで、窪みを「ボッチ」と言う
場合も盆地に近い場所を言うのであって、固有名詞としてのボッチとはこの早戸川流域では主脈稜線の地蔵平から蛭ヶ岳への急登になる手前の窪地のことをさすそうだ。
★話を戻して、この白馬尾根から流れ落ちてくるこの枝沢、すぐ水が涸れるにしては出合ではかなりの水量だし、それなりの滝だ。この沢はそれなりに大きな沢でちっちゃな
溝や窪みではないから、もちろん地元でもボッチと言われてるわけではない。
★白馬尾根とは丹沢主脈の鬼ヶ岩ノ頭(1608m)付近から派生し雷平に落ち込む立派な尾根で、この尾根は上部の草原地帯に冬に雪が積もると馬が前足を振り上げているような形に真っ白になるので通称白馬尾根と言われるようになった。この白馬の形は多摩都市モノレールの立川
の駅あたりからもハッキリ目視できる。
★地図ではこの尾根の中腹、大草原の末端あたりが源頭のこの沢、無名では話がしにくいので、ここでは尾根の通称にしたがって「白馬沢」ということにした。
★本間橋付近から雷平までおよそ1時間、雷平に左岸から来た場合、原小屋沢にかかる丸木橋を渡って2度目に本谷の右岸に渡る所からそのまま左岸を数m進めば出合だ。雷平から約10分の距離だ。
★25000図では雷平には右岸通しに来ることになっており、その場合はそのまま本谷も右岸沿いに歩くことになり、左岸に渡ることはなく出合を対岸に見ることになる。しかし、このルートはいくつか古いテープも
残ってはいるがほとんど歩かれてなく、踏跡を探すのが大変で今では廃道だ。
★出合から見える
手前の滝は3段8m、どこからでも登れる。その上で少し左折して3m幅広滝、右を登って、さらにその上には左が7mナメ、右は多段ガレっぽい滝、これは真ん中の右寄りを登る。
★この上が2段9m滝で、下段6mはどこでも登れるが、上段3mは立っていて水流の右を登る。
★正面に崩れた地肌の河原を少し進むと沢は左折し、連瀑帯最後の滝3mがある。この上は見事なほどまっすぐに傾斜の急なゴーロ状沢が伸びている。まっすぐに伸びている正面の沢が、さしずめ「左俣」ということになり、地形からするとこちらが本流のようだが、面白みはなさそうだ。
★ということで、ゴーロの続く左俣(本流)に右から大きな滝を落としている右俣に入ることにする。左俣はこちら。
★情報では右の滝は滝上で水流が涸れるということだが、いくら雪解け時期とはいえ、どう見てもすぐ上で涸れるような水量ではなさそうだ。
★右俣出合の3段大滝は、下段5mナメ滝は簡単だが、真ん中の8m垂直滝は登れそうもない。釜の淵を右に行って右側壁の崩れかけた泥混じりの岩壁を攀じ登ろうとしたが、岩がボロボロと
剥離崩落しそうで、ズリズリ引き下がる。ちょっと下の段まで下がって右の木立のまばらなザレた超小々小尾根を直上。すぐ左は8m滝、右は本流までの大ザレ、岩も崩れそうでなかなかの緊張感のある登りだ。8m滝上の3m滝もこの小尾根を直上して高巻く。滝の側壁ギリギリを這い上がったので、落口にはすぐに降り立てる。
★8mトイ状ナメを登ると、大きなナメ滝が現れる。この大ナメ滝は5段50m。1段目は左を、2段目は水流沿いを登って、3段目はあえて水流を行かないで左の岩クズの重なった左壁を、その上で4段目は水流を登る。5段目は細かく分けると3段だが、左から次に水流の左、最後の立っている部分は水流を登る。
★この沢の核心部はこの5段目のナメ滝部分の直登と、先の右俣出合の大滝の高巻きだろう。
★大ナメ滝の上はしばらくは、このナメの続きのような岩床が広がっていて、その上に所々岩が乗っかっている。もっと水量があって石ころを押し流せば、きれいなナメが続く美しい沢かもしれない。
★傾斜がもっと急になってくると、この岩床は小滝のような連なりになる。側壁も岩壁の部分が多く、およそ1040mあたりから雪渓が現れ、その下がいかような地形になっているのかがわからいまま、上へ上へと溝を登っていくと、比較的顕著な二俣状になる。右からは水がちょろちょろ流れ落ちてきているが、まだその上部が草原ではなさそうなので、左(正面)を選択。しかしここは3m滝
となっている。雪渓がシュルンドとなっているので、雪渓と岩とに体を挟んで滝上に乗り上がって突破。
★ますます雪渓に一面覆われてくると、周りは泥だらけになって、もう沢は溝状になって、最後ほんの20mぐらい泥で滑って直進できなくなった
所で右の背丈の低い笹に乗りあがると、もうそこは大草原の末端だ。
★登りついた所は草原末端で右に10mも行けば下山道の踏跡があった。これを確認して、少しまだ木立などがあるので、完全な草原になるところまで少し登ってみる。10分も登ると標高にして100mぐらい高度が上がり、真上以外ほぼ270度の展望だ。登りながら見えるが、今登ってきた白馬沢右俣の源頭は、草原が突然えぐれて溝になってできたような地形だ。
草原が陥没したような形の、ちょうど中ノ沢の水晶崩レ沢の枝沢最上部に似ている。
★草原はまだ枯れたカヤトの原っぱで、干草か藁の上を歩いてるようだ。緑の草原の写真は「早戸川中ノ沢鬼ヶ岩沢」のページでどうぞ。
★ゆっくり休憩した後、先ほど確認しておいた下山の踏跡にしたがって白馬尾根を下る。草原はどこでも歩けるが、踏跡は上から見て草原の左端についている。草原末端で樹林帯に入る場合も同じで、尾根の一番左端をはずさなければ迷うことはない。
★少し下ると、標高にしておよそ1200m、ドロの地肌に鹿柵が倒れている。ここで鹿柵の中に入り、ひたすら鹿柵を左に見ながら柵に沿ってまっすぐ下ると、標高950mぐらいのところでジグザグ道になり、じきに柵の出口をくぐる。このあたりで標高900m。谷間のような地形を5分も下るともう一度鹿柵の出入口があり、ここから出ると、そこは雷平の丸木橋のそばだ。