あの山この沢
丹波川 小常木谷
ほとんどの滝が直登できるのが魅力
ちょっとの藪漕ぎで栗山尾根にツメ、
そのまま栗山尾根を一気に下降
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コースタイム
余慶橋(青梅街道)665m→余慶橋を渡って階段から丹波川本流に下降
→(4分)小常木谷(滑瀞谷)出合650m→(5分)火打石谷出合675m
→(65分)兆子ノ滝下865m→(15分)不動ノ滝下900m→(25分)大滝下940m
→(8分)ねじれノ滝下975m→(17分)岩岳沢出合1000m→(7分)10m滝上1020m→
→(45分)二条7m滝下1235m→(25分)二股1360m→(70分)沢のドンヅマリ1720m
→右の栗山尾根へ→(15分)栗山尾根上の道1795m→(25分)尾根左への分岐点1520m
→(25分)作業用
モノレール起点1160m→(30分)作業用小屋700m
→(2分)火打石谷出合675m→滑瀞谷・丹波川本流経由→(13分)余慶橋
2005年6月18日(1996年8月31日)
★小常木谷に入るには3通りの方法がある。1つは、余慶橋のたもとから始まる大常木林道を経由して火打石谷出合まで山道を行くもの。このルートは標高差にして約100mもの登りがあって疲れるし、時間もいちばんかかる(約20分)が、丹波川本流が増水している場合にはこのルートで入るしかない。「火打石谷左俣」を参照。
★2つめは、余慶橋のすぐたもとから丹波川本流に下降して本流を遡行して小常木谷出合に至るもの。このルートは出合手前の川幅いっぱいの本流の流れをどうやって突破するかが成否を決める。左岸沿いに水深あるところは水流も速い。真ん中がいちばん浅く、上流の泡立っている岩の所までは簡単に行ける、しかしこの後ものすごい水圧を受けての渡渉が難しいが、滑らないようがんばるしかない。このルートでなら、火打石谷出合まで11〜13分。この詳細は「火打石谷左俣・栗山尾根の下降」を参照。
★3つめは、これがもっともポピュラーな入谷方法だが、駐車した場所から余慶橋を渡った150mぐらい先の青梅街道脇の「ナメトロ」の説明看板がある所から、急なナメトロ見学用か何のためなのかよく分からない階段を使って小常木谷出合に降りるもの。このルートだと時間的にいちばんかからず8〜10分ですむ。しかし、もちろん階段は川底まで付いているわけでなく、
上の写真に写ってる部分でおしまいで、そこからナメトロ(滑瀞)を眺めるだけのもののようで、少し右にワイヤーとロープがぶら下がっているが、下まで届いていない。もう少し1.5mぐらい右手に降りると、もう1本ワイヤーとロープがぶら下がっている。これにぶら下がって約8m下の川床に降り立てばよい。眼の前が小常木谷出合だ。ワイヤーで指を怪我しないよう注意。
★しかし、帰路には、このもっともポピュラーなルートはあまり使われず、もう沢に入りたくないのか大常木林道伝いに帰る人が多いようだ。
★火打石谷出合を過ぎると水流に洗われたきれいなナメが現れ、所々に2m〜4mの小滝やナメ滝が構えている。大きな釜のある滝もあるが、どこも簡単に越せる。
★火打石谷出合からおよそ1時間も歩くと、置草履ノ悪場と呼ばれるゴルジュ帯に入る。最初に現れる10m兆子ノ滝は左壁を直登できる。濡れた左壁から直上し乾いた岩のルンゼに入り込み、最上部で乾いた岩のリッジから落口に回り込むが、この落口が滑りやすそうなので安易に水流に足を置くのは怖い。ほんのちょっと上流に渡るようにする。
★兆子ノ滝上ですぐに8mの逆くの字ノ滝だ。下から見ると写真(2段目3列目)のように一見くの字そのものに見え、逆くの字ではなさそうだが、写真で見えている下段の上は左から傾斜はあまりないが狭まったツルツル
に磨かれたトイをものすごい勢いで水流が流れているのだ(写真2段目4列目)。見えている上の部分は下から見たときの3段目で、トイの上の落口部分だ。
★この逆くの字ノ滝は左から下段を登り、ツルツルのトイは思いっきり対岸(左岸)のトイの壁に右足を突っ張って左足をズリッとトイの左底に置く。後は滑らないようにジワジワッとずり上がって傾斜が急になるところで左足を置ける部分がほんの少し窪みとなっているので、ここへ足を乗っければほぼ無事通過できる。ハンドホールドはいっぱいある。このトイの外の左の乾いた壁にスリングがぶら下がっているが、これはかなり外れた位置にあり、何のためにあるんだろう。
★巻道は左岸だそうだが、逆くの字ノ滝上には岩壁に懸垂で降りることになるのだろう。かなり上部からトラロープがぶら下がっていた(写真)。
★深い釜を持ったナメ滝を過ぎるとすぐに12mの不動ノ滝だ。これは登れないから、右の左岸ルンゼを登る。高巻ルートとは言ってもかなり急で、こちらも水の流れている滝登りのようだ。少し登った所から左上の乾いた窪みに斜上して木の根っこを掴んで急登すれば滝上のトラバースとなる。途中で不動ノ滝上の5m滝をかすかに見下ろせる所がある。5m滝を過ぎた所で泥斜面をズリ下れば、沢へは楽に下降できる。
★釜の深いトイ状3m滝を過ぎると、小常木谷最大の落差2段18m大滝だ。大滝とは言ってもかなり寝ているので、この滝は比較的簡単に登れる。下段は左から取り付き、そこから水流左を一登りで上段の半ばに達する。ここから後はかなりシャワーを浴びながら水流を登る。細かいが階段状になっていて、さらに苔に覆われているのでそんなに滑ることはない。下から見える落口まで
ずぶ濡れになって行くと分かるが、ここが落口ではなく、ここから約3mはツルツルのナメになっていて、まだ気を許せないのだ。この一歩がどうにも踏み出せないので、水流から左の苔の付いたリッジに這い上がりたいのだが、ここが垂直で少し難しい。しかし抱きかかえるようにリッジに乗り上がれば、滑りそうな部分を過ぎて着水で登攀は終了。
★この滝上ですぐに2段15mねじれノ滝となる。下段7m、上段8mとも左岸から高巻く。高巻ルートの途中で上段の釜にトラバースできるところがあるのでちょっと見に行ってみると、この上段の滝壺はものすごく大きくて深そうだ。下段を左壁から登った場合は下段落口の淵を渡ってこの見学台から高巻を開始すればいい。
★再度木の根っこに掴まって岩混じりの側壁を登り、落口にトラバースする。8m滝落口直前でトラバースのバンドがなくなり、真下に滝壺が見える所に長いスリングが2箇所かかっている(写真4段目4列目)ので、これを掴んで一か八かの気持ちで振り子トラバースをして、斜面をズリズリッと
下がれば沢に降りれた。
★これでいわゆる置草履ノ悪場は終了で、すぐに岩岳沢が左から合わさる。悪場が終わりとは言っても、この先でまだ顕著な滝はいくつか現れる。
★すぐに現れるのが10m滝。右のルンゼから取り付き、落口へ斜上して、落口直下で水流の右を少し濡れながら滑らないように登る。
★すぐ上には7mのツルツル滝が待っている。水流右を登り、落口が滑りやすいので、右の壁に少し這い上がれば越せる。
★水量が多ければ3条になる2条7m滝を越すと、小滝は幾つも続くが沢は単調な流れとなる。
★傾斜が増し沢が藪っぽくなってくると二俣だ。本流である右に入ると、沢はさらに狭まり、標高1470mぐらいから時々伏流となったり、水流が出たりとなる。
★時々右上の栗山尾根はもうすぐそこかなと思えるほど高度が上がってくると、突然沢状地形が終わって、沢の
ドンヅマリとなる。通常は前方の笹薮に突っ込んで、およそ10分ほど猛烈な藪漕ぎをすれば栗山尾根最上部に出れる。
★通常の下降ルートは、この栗山尾根に出た後、栗山尾根を前飛竜流直下の岩岳尾根まで高度にしてさらに約100m登って、そこから岩岳尾根→大常木林道を通って下山するが、これはかなり距離も長く疲れるので、今回はツメた栗山尾根をそのまま下降した。
★栗山尾根を下降するならこのドンヅマリから敢えて上方へ藪をこぐ必要もないので、右へ右へと熊笹を漕ぎながら斜面を這い上がると猛烈な藪漕ぎはおよそ7,8分、後はさして藪でもない岩場の基部のトラバースや潅木帯を登って栗山尾根の急傾斜の道が不明瞭な場所に達することができる。
★辺りをよーく見回すと尾根上の踏跡と色あせて白くなった赤布を確認することができる。見落とさないようにしっかり見定めて不明瞭な踏跡を拾って下降を開始。尾根が痩せてくると明瞭になり、尾根が広くなるとものすごい熊笹帯の通行となったりの道だが、前回2年前に下降したときよりも踏跡がしっかりしてきたように思える。たまに赤ビニルテープもある。
★栗山尾根を下降しない場合、岩岳尾根経由の参考タイム(1996年8月31日) 沢のドンヅマリ1720m→(10分)栗山尾根1805m→(12分)岩岳尾根(前飛竜直下)1890m→(45分)大常木林道1350m→(60分)火打石谷出合
このルートでは栗山尾根につめた地点から火打石谷出合まで適度の休憩も入れて大体2時間半はかかるし登り返しもあるが、栗山尾根を下った場合休みも入れて1時間半ちょっとで登り返しはなしで降りてこられる。
★1550mぐらいの地点から尾根がだたっ広くなると、直進でなく左へ分岐する尾根に入らなくてはいけないので注意しながら進む。この尾根の最大のポイントはこの分岐点を見失わないことだ。
★栗山尾根の下降の詳細は「火打石谷左俣・栗山尾根の下降」を参照。
★火打石谷出合からは、疲れた体にはナメトロ経由の方が楽だ。大常木林道はまた100m近くの登り返しがある。出合でワラジを付け直し、ナメトロを通過して丹波川本流に出る。
★今朝本流に下りてきた階段から上がるのが一番早いはずだが、岩壁上からワイヤーを掴んで懸垂した所約8mぐらいだがこれをゴボウで登るのはつらい。ゴボウに力尽きこんな最後で墜落死したくなければ、素直に本流を余慶橋まで下ろう。堰のようになった泡立つ流れの真ん中の浅瀬を下るにはヌルヌルの岩の堰を腿まで本流に浸かって真ん中に出なければならず、こんなところで滑って結局はボチャンとなるぐらいなら、初めから左岸の段丘が尽きた所から水中の深みに飛び込み真ん中の浅瀬に2〜3m胸まで浸かる方がダメージが少ないだろう。2年前は朝本流の真ん中を通っての遡行だったので帰りも真ん中のルートを選んだが、今回は岩の堰で滑りそうだったので、左岸の深みを数メートル泳いでしっかり汗を流して起点に帰着。