あの山この沢
丹沢、早戸川原小屋沢
姫次・榛ノ木丸から
魚止橋へ下る
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コースタイム
旧丹沢観光センター(旧ゲート)595m→(15分)伝道685m→(30分)雷平810m→
(5分)中ノ沢出合850m→(10分)雷滝
下890m→(15分)深い釜の3mトイ状滝940m→
(30分)かさぎ沢出合1020m→(10分)バケモノ滝上1050m→(20分)3段20m滝下1065m
→(15分)ガータゴヤの滝下1110m→(40分)原小屋平の水場1275m→すぐ水涸れる→
(12分)縦走路1320m→(15分)姫次1410m→焼山方面へ→(5分)榛ノ木丸への分岐1405m
→(30分)榛ノ木丸1312m→(50分)林道魚止橋上ヘアピン625m→(5分)旧丹沢観光センター
2000年6月12日(1995年5月20日)
★旧丹沢観光センター先にあった魚止橋手前の車止めゲートは、うんと手前、国際マス釣り場の先に移設された。自己責任のもと危険を覚悟であれば、このはるか手前のゲートは通行可能だ。
★従来どおり旧ゲート近くに駐車して魚止橋を渡りすぐに左の早戸川沿いの山道に入って林道をショートカットして上の林道に抜け、伝道から山道をたどる。伝道沢を渡ってからは、鹿柵を迂回するルートよりも鹿柵内を通りぬける方が
いくぶん楽。
★杉の植林帯を抜けると早戸川本流左岸の水平道だ。右に行くとすぐに造林小屋がある。
★水平道が終わり河原に降りて右岸に渡りしばらく踏跡を辿ると、また左岸に渡る。そのまま左岸の道を辿れば雷平に至る。正面の沢が原小屋沢で、本谷はここで左折している。雷平手前で左岸に岩壁が張り出している場所があり、ここで本谷大滝方面に行くルートとしてまた右岸に渡る赤布が見えるが、こちらはあまり歩かれてないので、踏跡もしっかりしていない
から、大滝方面に行くにも左岸通しの方が歩きやすいだろう。。
★雷平から雷滝までも左岸にしっかりした登山道があるので、河原を歩くよりはそれを辿る方が早いが、通常F1とされる大岩の滝を味わうなら、中ノ沢出合を過ぎた所で沢に降りればいい。
★大岩の滝は3段で下段は単なる岩の重なりだが、中段に取り付くには深い釜を少し泳ぐことになるし、その上でシャワーをしこたま浴びながらの登攀となる。
前回の遡行ではここで苦労した覚えがある。ここを巻くには、大岩(正面岩壁)の右に逃げてそのまま左岸の登山道に這い上がればいい。
★そのまま登山道を歩けばすぐに雷滝に達するが、せっかく沢登りに来たのだから流れの中を歩きたいならば岩の重なりの小滝群を
ジャブジャブ乗越すのもいいが、この小滝群いざ遡行するとけっこう手応えがある。
★雷滝は、滝壁と右の樹林の際を登るルートがあるようだが、左の右岸小尾根に明瞭な踏跡がある。
★雷滝からかさぎ沢出合までも右岸沿い(最後に左岸)に比較的明瞭な踏跡がある(テープもある)。
したがって、原小屋沢は、濡れたくなければかさぎ沢出合まで沢支度をしなくても来れるのだ。もっとも所々渡渉でジャボンとなるに違いないが。
★雷滝からかさぎ沢出合までは幾つも1〜4mの小滝が現れるが、どの滝も釜が深くて大きく、水は澄み底まで透き通っている。かさぎ沢については「早戸川原小屋沢かさぎ沢」の項を参照。
★水量比1:1で正面に流れ込むかさぎ沢を右に分け左の本流に入ると、すぐに薄暗い感じのバケモノ滝が右奥に現れる。
★山と渓谷社刊の『丹沢の谷110ルート』の「
早戸川原小屋沢」の説明では、このバケモノ滝は水量比1:1の二俣の右俣出合に存在していることになっているが、これは明らかな間違いだ。手前のかさぎ沢出合の「二俣」と勘違いしている。バケモノ滝の左には水量のある沢など流れ込んではいない! ガレた幅の広いルンゼ?(ただの斜面だ)が落ち込んでいるだけだ。
★バケモノ滝は直登できないので、このガレたルンゼから巻く。上記山渓の本で言うところの”二俣”とされる泥ルンゼを少し登って、右後ろの落口方向に斜上すればバケモノ滝の落口に降り立てる。
★バケモノ滝上で左からのガレ沢を過ぎると3段20m滝となる。手前に細長く深い大きな釜がある。泳いで下段を登りきったとしても上段は垂直で登れそうもないので、手前右の泥の斜面を登り、高く登らないうちに左の落口にトラバースする。落口の真上を通過したところで、木の根っこに掴まって2m弱ほど降りれば高巻き終了。ガイドブックによっては高巻き後10〜15mの懸垂下降となっているが、それはちと高巻きすぎだ。
★右から飛沫を散らして落ちてくる小沢を過ぎると、幅広のナメ状小滝の上に10mのきれいな形をした滝が現れる。この滝は右から簡単に巻ける。滝上左岸から見ると、左から
(右岸)も巻道がついているが沢筋に降りるところで少し苦労しそうだ。
★この10m滝の先で右からガータゴヤの滝(30m)が落ちている。一見傾斜はなさそうだが、直下まで行くと簡単には登れそうもないことが分かる。
★この滝の下に左から出合う沢は、地元の山仕事の人達や猟師達の間では取り立てて名称は付いてないという人もいるくらいさしたる水量もない沢だが、これを忠実にツメていくと蛭ヶ岳頂上に達する(遡行記録は「早戸川原小屋沢又兵衛沢」の項を参照)。
昭文社の2004年までの地図ではこの沢は「ボッチ沢」ということになっているが、地元(津久井町鳥屋)ではボッチとは窪地のことを指し、沢の名称ではなく、ボッチ沢なんて名の沢はないと言っている(この件は「又兵衛沢」や「かさぎ沢」、「かやの沢」の項を参照)。この昭文社の地図も、2005年全面改訂版ではボッチ沢の名称を削除している。
★さて、ではこの沢の名はなんだということになるが、私は「又兵衛沢」だと考えている。
白山書房の古い『東京周辺の沢94年版』でも又兵衛沢となっている。しかし、地元の猟師は”ガータゴヤの沢”で通じるよと言っていて、では又兵衛沢はどこ?と聞くと、人によって微妙に位置が違う。原小屋沢を遡行してガータゴヤの滝上の先で右岸に出合う沢で地蔵ノ頭付近からの溝が地蔵沢となると、もう一つ手前の溝が又兵衛沢か名もない沢ということになるが、又兵衛となると、今度はこちらガータゴヤのほうの沢が名もない沢となってしまう。いずれにせよ、ボッチ沢というのは間違いだ。尚、地元では蛭ヶ岳山頂に至る沢は又兵衛沢ではないという人もいる。
★ガータゴヤの由来は、その昔この辺りにガータ小屋があったからだそうで、地元鳥屋の炭焼きが泊り込みで入っていた小屋だそうだ。
★ガータゴヤの滝は、右の樹林の中から巻けるようだが、左の又兵衛沢に入って直上すればどこでも登れる。滝心から離れるほど楽に巻けるが、滝心に近い所なら乾いた岩を草をよけながら攀じるとごつい鎖が3箇所見つかり、これを辿って登ればわけなく落口に立てる。
★このすぐ上でもまた左壁に鎖の掛かった小滝がある。こちらは岩がツルツルで鎖を頼りに上部をへつると滑りやすそうなので、深い釜に腰まで浸かって滝心に乗り上がって流水の中を登れば簡単だ。
★この上で沢は急に傾斜がなくなり小川の流れのようになる。ただし水量はまだまだ豊かで、所々現れる淵には魚影も見られる。
バケモノ滝上で出会った釣師モドキ沢ヤ?から「後から釣りながら行きますんで、なるべく水に入らないようにお願いします」なんて言われてたので、魚達に危険を知らせるべく恐怖で今後1週間は姿を現さないようジャブジャブ深い淵も歩いていたら、さすが先月までベットリ雪渓に覆われていたようで水が冷たくて下半身が冷え切ってしまった。
★涸れた沢を左から2本合わせ、右からのドロの溝を合わせ、さらに左から涸れ沢を合わせると、塩ビパイプで造られた水場となる。原小屋平の水場だ。水量の多いときならまだこの上流でも流れはあるのだが、今回はこの水場のすぐ上で水は涸れた。縦走路からの安定した水場としてはここしかないのだろう。しかし、縦走路からはかなり遠い。左手かなり上部はもう主脈縦走路だが、この辺りからは縦走路と沢がほとんど並行しているので、縦走路がまだ少し下っている限り無理に縦走路に這い上がる必要はない。
★沢が杉の樹林帯の中の溝状になり、左上前方の縦走路がぐんと近づいてきたら登山道に上がればいい。ものの1分でツメは終わる。原小屋跡を少し過ぎた所に出る。前回の遡行では大雨直後だったわけでもないが、この辺りまで水流があった。
★姫次まで行った後の下降は、かやの沢やかさぎ沢を下るのがひょっとして一番早いかもしれない。注意する箇所は、すべり滝上の痩せ尾根の下降だけだろう。
★仕事道か登山道を下るなら、榛ノ木丸経由が早いが榛ノ木丸への登り返しがつらい。
★姫次から焼山方面におよそ5分平坦な道を進むと、右のだたっ広い尾根に緩やかに下ってる踏跡が見える。「鳥屋造林組合管理地」の看板も転々とつながっている。この看板を目印に下っていくと榛ノ木丸に達する。途中切通しを横切るが、この切通しは昔大平からかさぎ沢へ仕事道があった時代、牛に材木を運ばせていたときに使っていた道だそうだ。
★榛ノ木丸から魚止橋へのルートは「大杉沢
左俣」のページを、伝道への2つのルートは「かやの沢」と「かさぎ沢」のページを参照のこと。伝道へ下る2ルートよりも魚止橋へ下るルートの方が5分ぐらい早い。
★また、多くのガイドブックでは一般登山道で大平を経由して早戸川を渡渉し戻ってくるようになっているが、このルートだと前3者に比べ20分以上も時間がかかる。
参考タイム(1995年5月20日) 姫次→(12分)八丁坂ノ頭→(11分)青根分岐→(6分)大平下降分岐→(35分)大平キャンプ場→(16分)早戸川河原→(5分)早戸川林道→(20分)車(ゲート)