あの山この沢
丹波川、火打石谷右俣(本谷)
まぼろしの大滝の怪
まぼろしの大滝は火打石谷本流(右俣)にはなく、
高巻いているのは本流の40m大滝だ
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コースタイム
余慶橋(青梅街道)665m→大常木林道経由→(20分)火打石谷出合675m→
(30分)7m滝上765m→(80分)大滝手前10m二条滝下1035m→
(13分)70m大滝直下(二俣)1060m→8m滝手前に戻って→(20分)40m大滝直上1100m→
(5分)8m滝上1110m→(13分)右に枝沢を分ける(ガイドブックの二俣)1205m
→(2分)奥の二俣(滝の上で)1210m→(10分)右に沢を分ける1240m
→(5分)水涸れる→(15分)造林小屋跡1310m→(5分)再び水流現れる
→(10分)15m滝1405m→(20分)5段35m滝下1490m→(10分)5段35m滝上1520m
→(10分)6mCS滝1590m→(15分)最後の二俣(右俣はすぐ水涸れる)1690m
→右の支尾根に取り付いて→(20分)ミサカ尾根登山道1785m→(40分)熊倉山1624m
→(30分)サオラ峠1410m→(60分)青梅街道奥秋650m→(25分)余慶橋
2002年8月3日
◎このページを見る前に、左俣のページをぜひ見てください。
☆火打石谷左俣のページで、この沢は困難な高巻きを強いられる滝もあることから遡行する人も少なく、遡行記録や大滝の写真もあまり見ることがな
く、そのため出回っている遡行図の「まぼろしの大滝(70m)」の場所に大きな誤りがあることも知られていないことを書いた。左俣のページ参照。
☆同一編者・仲間による『奥多摩の谷123ルート』(山と渓谷社1996年刊)
と『決定版関東周辺沢登りベスト50コース』(山と渓谷社2002年刊)の遡行図によると「まぼろしの大滝」は火打石谷の本流にあることになっているが、実際には谷は大滝直下で二俣になっていて
、大滝は本流=本谷=右俣ではなく支流=左俣にある。右俣にも二俣から30m上流に大滝があるが、これは落差およそ40mで
、70m大滝を手前に見て「まぼろしの大滝」というにはあまりに落差がなさすぎる。側まで近寄れば両方を見比べることができる。
どうしてこんな誤認(6年間も)が生じたのか、もう一度遡行して誤認の検証をしてみた。
★余慶橋からすぐに丹波川に降りて本流を遡行し小常木谷出合から滑瀞谷を通過すると、火打石谷出合までは約10分で到達する。詳しくは「火打石谷左俣、栗山尾根」の
ページを参照のこと。また、もっともポピュラーな入谷方法は「小常木谷」のページを参照。
★大常木林道は火打石谷出合に架かる橋を渡って小常木谷に沿っているが、橋を渡った後すぐに右手の尾根に上っている踏跡を見出すことができる。50mぐらい登ると台地状になって、造林用の大きな小屋が建っている。ここから小常木谷と火打石谷を分ける栗山尾根には岩岳尾根に合流するまでかすかな道はあるようだ。左俣(大滝)を遡行すると栗山尾根に登りつめることになるのでこのルートはいつか踏査してみよう。
一年後栗山尾根を下降してみた。「火打石谷左俣、栗山尾根」のページを参照。
★第一ゴルジュ出口の7m滝は
手前の泥ルンゼから高巻くが、先にも書いたようにガイドとは異なってまったく問題なく簡単である。滝の右壁の草付をよじって左に斜上するバンド伝いに落口に達することもできるが、ホールドが少なく高度感があって怖い。
★10m二条の滝を右から巻くと、水流のある右からの小沢のナメに降り立つ。ガイドブックの大滝高巻きルートはこの小沢(ルンゼ)から始まる。大滝の高巻きはこのルンゼからでは早過ぎる
、手前すぎる!のだ。
★ルンゼのナメ滝を本谷に降りて『門番のようなやつ』と書かれている8m滝に向かう。狭まった滝の向こう正面に『まぼろしの大滝』が見えるが、この位置からは全貌は見えない。
しかし、大滝を垣間見たことでルンゼに戻っては、もう二度と大滝を見ることなく、したがって、この大滝を高巻いたと勘違いしたまま右俣=本谷を遡行してしまうことになる。
★大滝直下に達するには、8m滝左岸の泥ルンゼ(岩に泥がかぶっているだけの斜面)を潅木を頼りに登って左にトラバースしてなるべく下部で岩壁を越す。鶏冠のような岩壁の向こうに圧倒的高さの70m大滝が、そしてすぐ下には大滝方向(左俣)へではない右に
真横に大水量で流れる本流(右俣)を見ることができる。
★本流には深い釜を持つ5m滝があるので、8m滝を巻いた斜面から川床に降り立つ前に立木に掴まりながら滝上にトラバースすればよい。少し先に8m滝と似たような狭まった小滝があり、この小滝の先はまるでお椀の中のような地形で、ここに左から大爆音を轟かせて大水量で落ち込んでいる本谷の40m大滝を見ることができる。この滝はこの位置からしか全貌を見ることができない、そういう意味では「幻の滝」かもしれない。40m滝の写真
★★さてこの40m滝の高巻き方法だが、ここまで来ても周囲切り立った斜面なので8m滝手前まで戻るしかない。5m滝のトラバースはかなり緊張させられ、8m滝の直上の岩壁を廻り込んで泥壁までズリズリとずり下がることになる。この岩の露出した泥壁に達したら、8m滝下まで降りないで上へ上へと登っていくと、10m二条の滝を高巻いて降り立った水流のあるルンゼからの高巻きルートらしきしっかりした踏跡に出会う。左手は鶏冠のような岩壁がずっと続き、本谷を見ることも大滝も見ることもない(
かなり下部で注意して左後方を見るとはるか高みから落ちる水流と白い70m滝の壁をある位置まではチラリと目視できる)。40m滝に近づいたあたりで一旦鶏冠が切れるので側に少し下ってみると、黒々とした40m滝を間近に見ることができる(ただし、高巻きルートから外れなければそれも見えない)。
チラリとでも両方の滝を同時に見れる所はない。
★40m滝落口に達しても沢に降りないで、8m滝上まで巻くと高巻きは終了する。冷静に考えれば、直進方向にある70m大滝を円弧を描きながら高巻き、180度の位置でなく90度の位置、高さも足りないと分かるはずだ。前回疑問に感じた「ガイドの遡行図は大滝が本谷にあると前提で間違いを犯し、次にそれを高巻いたつもりで隣の40m滝を高巻いたにすぎなかった」ことがはっきりした。
★40m滝・8m滝より上流はゴーロの河原が続き「遡行図の二俣」となるが、右からの枝沢という程度だが、それをつめると25000図の熊倉山北側に登りつめそうだ。しかし『二俣』というに相応しい分岐は、この分岐の2〜3分上流にある。左沢と1:2で右が本流と分かる。右の本流に入ってもゴーロは続き、右に枝沢を分けると、そのうち水が枯れる。
★前掲のガイドでは再遡行したはずなのに二度とも先の「遡行図の二俣」で遡行を打ち切っているが、これより上部の滝を見ないまま知らないままの沢登りに終わったことになる。火打石谷には大滝は3つあるのだ。ここで打ち切ってはいけない。
★ゴーロの中にトタンの破片やゴムホースが散在し始め、「しめた下山ルートの手掛かりか」と思いながら進むと、右岸の台地にかなり大きな小屋跡があった。この小屋に人(々)が入っていた頃どこから
通ってきたのだろうか、どこかに仕事道の跡でもないかと探してみたが見当たらない。沢を遡行してきたのだろうか。
★小屋跡を過ぎて少し行くと再び水流が現れる。先程のゴムホースはここから小屋に引いていたものだった。
★15m滝は結構傾斜がありヌメっているので水流の直登は難しい。右のたよりない草付きを登る。水流が二条なのはここが二俣になっているからで、かぶさっている大岩の下をくぐるように落口を左へトラバースして本流に戻る。
★五段35m滝は下からは上部が見えない。この滝も二条になっているが、やはりここが二俣になっているからだ。一段目(最下部20m)は右端を登って右の沢の落口に達し、左の沢(本流)の一段目テラスを左端までトラバースして、二段目、三段目は水流を登る。四段目は滑りやすそうなので左端の笹を掴んで四段目テラスに達し、五段目の水流を登って落口の大岩下に達する。大岩の下部を左に回り込めば上部に抜けることができる。
★水流がぐんと減ってきても小滝は数え切れないほど続く。小滝上部で二俣状になり左の本流上部が開けてきたら、右手の尾根が低くなってくる。ようやく稜線に近づいた。前飛竜直下は前回栗山尾根から眺めたとき、大滝左俣のつめと同様に一面クマザサ帯だったので、藪漕ぎを避けるため、この二俣状から獣の踏跡を辿って右の小尾根に取り付く。ここの二俣状は水流はあるが、獣の糞尿の臭いでとても長く座り込んでおれないほどだから、水はもっと下で補給しておいたほうがよい。
★支尾根は藪もなく歩きやすい。最後に笹薮ととなるが、2〜3分ほど藪を漕ぐと、ミサカ尾根の登山道に出る。沢から20分で稜線に出れた。
★丹波に向かって下山し、奥秋の集落のイノシシ柵に入ったら、すぐ下の農道に降り、農道を5分も下ると青梅街道に出る。青梅街道を25歩くと余慶橋に戻れる。